アズマロルヴァケル

神と人との間のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

神と人との間(2018年製作の映画)
3.4
根本的に不愉快だったブラックコメディ

・感想

この映画は特集上映『TANIZAKI TRIBUTE』の第1弾として上映されていた作品で、『ダブルミンツ』や『下衆の愛』といった作品を手掛けている内田英治監督の作品ということで観賞しました。

映画は女優さんの濡れ場や胸の露出があるのでエロティックものなのだが、結論としてはラブストーリーにもコメディにもサスペンスにもとれる作品。

原案は谷崎潤一郎が『細君譲渡事件』を題材にした中編『神と人との間』を基にした作品で、結構濃厚な内容である一方で、主人公の穂積がいかにしてヒロインの朝子が添田と結婚しても一途に思っていたり、朝子が添田が最低な人間であるにも関わらず愛そうとしていたりとなかなか登場人物に肩入れしにくそうな描写が多い。

そしてなんといっても、衝撃的なシーンが印象的だった。まず、後半あたりで添田の悪友たちが家を飛び出して下着姿ではしゃぐシーンがとても面白い。商業映画なのでそんなに全裸ではしゃぐことは出来なかったんだろうと思うけど、滑稽さがあって好感がありました。それで中盤に添田と穂積がいる前で幹子が男と上阪神下着姿で唇を重ねるシーンも結構ドキッとしました。原作は未読なので分からないのですが、もしこれが原作に描かれていたら幹子ヤバイなぁと。

ただ、時代設定が2010年代っぽいのに殆どの登場人物の服装が70年代か80年代感があり、田舎町での穂積の家や幹子?の家のセットなんかはいいとして、添田の家が若干今っぽくないのは少しだけ違和感があった。

あと、敢えて言うとしたらオリジナルキャラである編集者の聖美は登場人物たちを遠くから見ている第三者の役どころではあるんだけど、出来ればラストで穂積たちの輪の中に介入してくれたら原作とは違う一捻りあるオリジナルのラストができたのではないかと。

まあ、とにかくラストシーンはなんといっても後味が悪かったです。少なくとも添田と朝子の娘である峰子の登場シーンは比較的に少なかったのですが、朝子が泣き叫んでいる裏で外で「やったー!やったー!」って身近な人の不幸を喜んでいる姿はかなり気味が悪かったのでじわじわ来ました。ブラックコメディとはいえ、劇中ではほがらかなBGMに対してエンドロールが悲観的な音楽を流すという良い意味での違和感も素晴らしいものでした。ただ峰子の描写が少なかったのでなんでそんなに「やったー!やったー!」って喜べるのかが理解し難いところではあった。


他にも『TANIZAKI TRIBUTE』として『7s セブンス』『青の帰り道』の藤井道人監督のスリラー『悪魔』や『桜ノ雨』『天使のいる図書館』のウエダアツシ監督のコメディ『富美子の足』も余裕があれば観てみようかと思います。