シャチ状球体

グレインのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

グレイン(2017年製作の映画)
4.1
全編モノクロのディストピアSF映画。

領域内に入ったものをマイクロ波で焼き殺す装置が周囲に多数置かれている都市。そのすぐ横には見渡す限りの草原が広がっていて、自然と人工的な施設が一体になっているグロテスクさが芸術的。

この映画で描かれる未来社会は非常に現実的で、価値観は現代レベルのまま、技術だけが進化してモラルが更に失われた考えたくない未来をそのまま映してくれる。それどころか、人間を構成する素粒子は宇宙にとって異質なものであるから世代が進むごとに種として劣化していく=遺伝子操作をすることで劣化を加速させる……という救いのない設定もあるけど、ラストに明かされる真相は希望そのもの。

エロール達の街の外へ向かう旅はノスタルジックかつ抒情的で、生命の全てが滅んだ小さな町や河、砂漠をひたすら歩くうちにお互いの過去が段々と明らかになっていき、次第にブロマンスな関係が生まれてくるのも見所の一つ。この人間関係の行く先も納得できる結末で、うまくまとまった脚本とスローテンポで哲学的な人間ドラマが心を清らかにしてくれる……。

「人は常に夢の中 目覚める時は死ぬ時だ」
シャチ状球体

シャチ状球体