タケオ

犯罪都市のタケオのレビュー・感想・評価

犯罪都市(2017年製作の映画)
3.4
-全てはマ・ドンソクの拳のために『犯罪都市』(17年)-

 マ・ドンソクが韓国を代表するスター俳優のひとりであることは論を俟たないが(国籍はアメリカだが便宜上)、彼にはひとつだけ大きな問題がある。というのも、あまりにも逞しすぎて'敵'の設定が難しいのだ。相まみえるマ・ドンソクと敵、それ即ち敵の敗北を意味してしまう。この難点を如何にして克服するかが、マ・ドンソク主演のアクション映画には求められる。
 本作『犯罪都市』(17年)はこの難点を「マ・ドンソクと敵がなかなか出会わない」というイージー極まりない方法で乗り切ろうと試みたが、正直それが上手くいっているとは言い難い。部下のミスで取り逃がしたり電話が繋がらなかったりと、映画はありとあらゆる方法でマ・ドンソクと敵を引き離そうとするが、そのせいで主人公が'いつも一歩出遅れる役立たず'にみえてしまう。また本作は、随所に主人公たちの気の抜けたやり取りを挟み込むことで物語がシリアスになりすぎないよう工夫しているようだが、全体的にバランスが悪く歪な印象を受ける。敵方が残虐非道な行為によって街を恐怖と混乱に陥れていくなか、毎度のように一歩出遅れるくせに気の抜けたやり取りを繰り返す主人公たちの姿は、いくらなんでも能天気にすぎる。敵方が凶悪な事件を起こす→主人公たちが出遅れる→気の抜けたやり取り───という展開の繰り返しには少々退屈させられた。
 とはいえ、ちゃんとクライマックスには誰もが望んだ展開が用意されている。遂に相まみえるマ・ドンソクと敵、それ即ち敵の敗北。そこだけは裏切らない作品である。いわば本作の構成は「西部劇」に近いのかもしれない。「西部劇」で全てのドラマがクライマックスの決闘へと収斂していくように、良くも悪くも本作の全てはクライマックスのマ・ドンソクの拳のためにあるのだ。
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