三四郎

柿の木のある家の三四郎のレビュー・感想・評価

柿の木のある家(1955年製作の映画)
4.5
とっても心温まる名作。笑えるシーン満載なのもまたいい。
次に来る展開が読めていても、あるいは、ココ笑いどころですよ、といった演出でもやはり笑ってしまう。そんな爽快な作品だった。

最初は怖い奥様だったが、だんだんと母性が芽生え、母と娘の愛情は深くなってゆく。
養子にもらった娘への愛情が深くなる母と冷めてゆく(接し方が厳しくなってゆく)父、この表現がたった95分の中でしっかり描かれていた。
初対面で、母(高峰三枝子)は「お母さま、お父さま、と呼びなさい」と言うが、娘はずっと「お母さん」と呼び、母もそれ以後特に注意することはない。娘と過ごすうちに親子は「形式」ではないと理解したのだろう。

最後、四国まで娘を迎えに来た夫婦に、娘が砂浜を「おかあさーん!」と叫びながら駆けてゆくシーン、親子3人が手を繋いで砂浜を歩くシーン、心揺さぶられずにはいられなかった。
古い映画を見ていると、女中さんが常に優しくいい人というのがおもしろい。作家、脚本家、監督の幼少期、きっと父母に叱られても女中さんだけはいつも優しかったという記憶があるからなのだろう。

当時13歳だった桑野みゆきも出演しているが、大人になってからよりもこのころの方が可愛いらしい。
高峰三枝子、上原謙、桑野みゆきと松竹キャストにもかかわらず東宝映画というのも興味深い映画だ。
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