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長江 愛の詩のclever1のレビュー・感想・評価

長江 愛の詩(2016年製作の映画)
3.8
劇中の長江の旅路を同じように船で辿りたくなる作品。
明確なストーリーも脚本も有るような無いような、映画としてどうなの?と思ったりもするけど、長江とその沿岸の異国情緒のある美しい描写や庶民的な風景が、ゆったりとしたロード・ムービーの様に展開するのが良い。一方で適度に道程がスキップされるので退屈ではない。主人公やアン・ルーが訪ねる寺院などの名所が気になり、Google Mapにマーキングしてしまった。
結局アン・ルーは主人公の母親なのか、長江の象徴的なものなのか…いろいろ謎な点があるけど、まあ、解釈はご自由に、という感じなんだろう。
三峡ダムの建設で居住地を追われた水没地域の村や、移住させられた突貫工事の高層建築の都市が長江沿岸の山岳地帯の景勝を蝕んでいる様な姿など、古き良き長江の消失を訴えてる様でもあった。
個人的な解釈では、主人公の父=長江、主人公の母=アン・ルー=長江と共にあり見守る存在、主人公=変わりゆく長江、ということじゃないかと。アン・ルーの「私の長江よ!」という台詞や、主人公がアン・ルーと関係を深めながら長江の源流に近づいていくに従い、父親と同化(≒原点回帰)していく様な描写にも整合するし。
こういう映画があってもいいね、と思える良作だと思う。
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