ひでG

ミッシングのひでGのレビュー・感想・評価

ミッシング(1982年製作の映画)
4.0
観てなかったです。
よーやく観れました!名作シリーズ⑤

ミッシング=行方不明
なるほど映画になりやすいモチーフだ。
「ミッシング」とタイトルについた映画の多いことか!

その中でも、1982年のカンヌ・パルムドール受賞作として最も有名なのが本作だ。

監督のコスター・ガヴラスは、本作以外にも、「Z」ら政治的なテーマをサスペンス色の濃い映画にして活躍していた。
パルムドールやアカデミー外国語賞、ベルリン金熊賞も受賞している。

ただ、学生時代の僕は、政治サスペンスより「スティング」や「燃えよドラゴン」のエンタメ性が強い作品に夢中で、未見のままだった。

本作は、チリでミッシング(行方不明)になった男性を救うために、アメリカから来た父親と現地で夫と離れてしまった妻が捜索する物語だ。

見どころは二つある。

まず、チリクーデターのこと。
行方不明の息子を探す過程で、本来なら
最も頼りになるはずのアメリカ大使館が
協力してくれない、いや、それどころか
この事件に関与している疑いが浮かび上がってくる。

調べてみると、チリクーデターはかなり複雑な経過を辿る。

1970年代初頭、チリでは脱アメリカ依存の勢力が拡大し、ついには政権を握ることになる。

同時のニクソン米政権は、軍部を助け(操り)民主的選挙で選ばれた政府をクーデターで倒したのだ。
クーデターで誕生したピノチェト政権は、左派活動家など3000以上が逮捕、処刑したとされている。

本作のチャールズのように外国人も拘束、行方不明になっている人たちも少なくない。

アメリカが影で繋がっている?
歴史の大きな歪みがこの映画のサスペンスを盛り上げる最大の要因になっているのは複雑な気持ちだ。

もう一つは、ミッシング(行方不明)を探す2人の関係性の変化である。

作家志望のチャールズと妻ベスは、国家や伝統にとらわれず、理想を求めてチリに来ていた。

一歩、チャールズの父は、敬虔なキリスト教で、国家を信頼する保守的な人間。

チャールズを探すためにチリにやって来た父エドは、ことごとく妻ベスと対立する。 

現地のアメリカ大使館の対応に不信感を抱く妻ベス、
あくまでもアメリカを信じ、逆にチャールズたちを責める父エド。

こんな2人だが、捜索をする過程で、徐々に心を通わせていく。

妻役のシシー・スパイセクも夫が失踪した怒りや寂しさや不安を熱演している。

そして、父親役のジャック・レモン🍋
この演技でカンヌの男優賞を受賞した。
保守的で頑なな彼が、自身の国へ疑惑を広げて、やがて、それを爆発させる演技は
まあ、見事です!

チリクーデターとアメリカ政府の介入と
いう政治的なテーマを、一級のサスペンスと超一級の演技のぶつかり合いで魅せてくれる、とても充実した作品でした。
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