似太郎

愛と希望の街の似太郎のレビュー・感想・評価

愛と希望の街(1959年製作の映画)
4.6
【ぼくは正しい犯罪者になるべきだった】

大島渚のデビュー作。この頃からペシミスティックで不条理なムードが強く押し出されており、鳩=平和を売って金儲けする貧乏少年の視線を通し戦後日本の醜悪さを痛烈に抉ったドラマになっている。🤔

やはり大島渚の戦後史観は「嘘の塊」といった些か極端な…と同時に一種の悲哀と絶望を感じさせる松竹人情モノらしからぬアイロニーが込められているようだ。やや台詞が硬めで青臭いのが玉に瑕だけど。😓

同時代の増村保造や中平康といったモダニストが「戦後は終わった」的なバブリーな雰囲気を醸し出す作品を撮る一方で、松竹ヌーヴェルヴァーグの監督たち(大島、吉田、篠田)は常に政治的で社会悪/日本のアンダーワールドに言及。

元・京都大学全学連の委員長であった大島渚だけに、ズバズバ日本社会の矛盾を切り取るアプローチがのちの新左翼系映画作家の手本となった。

戦後の黒澤明、木下恵介、今井正といった旧左翼の作るメソメソした庶民劇に対抗して「毒」を盛り込むことにより、暴力&SEXによる革命を目指す世代に圧倒的な支持を受けることになる大島渚。若気の至りみたいな面も含めて鮮烈な映画運動だったな〜、と改めて痛感する。

あの頃(高度経済成長期)は良かった!☺️なんて本作を観れば嘘八百だという事がよく分かる。
似太郎

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