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ナショナル・シアター・ライヴ 2018 「イェルマ」のTOTのレビュー・感想・評価

4.1
仕事も愛もあるのに一つだけ叶わぬ願い「妊娠」。
全てを求める妻の自尊心と妄執、理解できぬ夫、軋む関係。
演者を囲む透明な牢獄、ショーケースの如きアクリル板が観客の思いも反映する。
章ごとのテロップと暗転、音楽や編集が不安を煽って、今まで観たNTLiveで一番映像化の妙味を感じた作品。
‪演者と物語に何を見るか。
アクリル板が観客の思いを透過して没入感を作るし、逆に遮断して客観視させる壁にもなる。
テロップや暗転演出、パワフルな演技もまた同様で、観る人によって意見割れそう。
映像化によって平板になる部分と突出する部分の濃淡も考えて、カーテンコールでホッと息をついて我に帰るのもエキサイティング。
‪サイモン・ストーンの大胆な翻案ということで、ロルカの戯曲も読んだ。
確かに大胆。
でも今回の意図はアリだと思うし、他の方の現代的な翻案や演出も観たい。
あと、ストーンが2011年にイプセン『野鴨』演出した時もアクリル板を使った美術を採用したそうで(なんかわかる)それも観たいな。

‪先行で観たけど上映後のトークショーで、完全に現代劇なのに呪いの言葉で終わるってコメントと(谷さんだったかな)、演出サイモン・ストーンがPlayではなくMythの再演って言ってたと司会の兵藤さんが紹介されてたの印象に残ってる。‬
‪小川さんが「仕事のこと考えないで見た。演技もすごかったけど、演劇を映画で見ることがあまりなく、すごいなって楽しんで見た。」って仰ってたのも良かったな。

賛否両論ある作品のようですが、‪なんだかんだ今年観たNTLiveの中で一番刺激的というかエキサイティングだったかも‬。
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