【豊満マッスルに憧れて】
ポジティヴもっこりゲイ・アート先駆者の伝記映画。劇場行きはなんとなく逃しレンタルで。
この絵は知っていたが、作者については無知だったので、知れるという意味でよい映画でした。
映画としては淡々と流れ、欧州映画でよく見る仕立て。絵が放つ膨満感に対しては冷ややかでさえある。でも、そういう時代だったのですね…。
トウコ本人もゲイだったが、第二次大戦下、男だけの戦場でまさに、エロスとタナトスに揉まれながらあの作風が生まれた、という経緯がリーズナブルに描かれていました。そこから結果的に、生に向かったのですね。
作品はゲイ向けピンナップ・アートでもあったのかな?と改めて思った。
私は自覚の限りヘテロで残念ながら、残りの人生で同性愛に目覚めることはないでしょうが、例えば、ピンナップ・ガールの巨乳や巨尻を、トウコ描く男が隠し持つ巨根や、筋肉に脳内肉感変換すればああ、成程と納得できます。ゲイ版バーガ・ガールみたいなね。
しかし、これだけ差別抑圧されていた人物が、作品が浸透して支持され、有名になると、その絵が国の記念切手にまで採用されちゃうって皮肉と言うかゲンキンと言うか…ご本人は大変だったでしょうけれど。
何にせよ、虐げられていたマイノリティが立ち上がる話は、勇気づけられるし、応援したくなります。
しかし、実話だからこうなったのでしょうが、物語としては、あの男×男×女の三角関係が、もっと膨らむのかと思っていました。
その点から近しいところでは、ワンダー・ウーマン原作者の特異な人生を描く『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』の方が、物語としては面白かったですね。
<2021.2.7記>