半兵衛

愛のきずなの半兵衛のレビュー・感想・評価

愛のきずな(1969年製作の映画)
3.7
松本清張×コメディ出身の坪島孝×日活アクションやテレビドラマで活躍した小川英×藤田まことという変なスタッフの組み合わせが、かえってジャンルにとらわれないノワールのようでコメディで小市民ドラマという不思議な魅力のある秀作になっているような。

会社の重役の娘である妻に頭が上がらず、そんなストレスを発散させるためたまたま知り合った美女の園まりと軽い気持ちで浮気するが彼女が本気になってしまい困ってしまった挙げ句凶行に出てしまう…。そんな徹頭徹尾情けないそのくせ欲や見栄だけ一人前にある主人公のキャラは後年中村主水や安浦刑事といったサラリーマン的な人物像をはまり役とした藤田まことによく合っている、そして園まりに手をかけたときや終盤の切羽詰まったやりとりなど緊迫した状況なのに不思議と笑えてしまうのは元コメディアンだからこそ出来る芸当なのかも。

そして藤田まことを結果的に堕落させてしまう無意識なファム・ファタール園まりが凄まじく魅力的。健康的な顔立ちとルックスなのに、ふと見せる艶っぽい表情や朗らかで屈託のない表情と結果的にやっていることのギャップによって一層運命の女としての輝きを放っている。

冒頭とラストで降る雨がまるで物語が一巡して元に戻ったかのようで印象的。

元奥さんであった園まりを追いかける佐藤允はチンピラ+ストーカーっぽいが、最後に男気を見せるのでいい人のように思えてくる。

あと『もののけ姫』のように女性からもらったプレゼントを他の女性にあげるのはやめましょう。
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