ぽん

アナと世界の終わりのぽんのレビュー・感想・評価

アナと世界の終わり(2017年製作の映画)
3.9
エモさ満点の青春ゾンビ・ミュージカル。

隠れた名作?青春ゾンビ・コメディ「悪魔の毒々パーティ」(2008)を思い出した。
何がいいってちゃんと身近な人が亡くなるときに悲しみが表現されてること。モブっぽい友達が死ぬ時もちゃんと仲間を思って心を痛めてる。ただ物語を転がすために動いてるんじゃなくて、きちんとエモーションを感じさせてくれるキャラクター造形が嬉しかった。

ゾンビ自体はもう手垢つきまくりでハイハイって感じではあるけど、たぶんその辺も織り込み済みで青春の1ページとして描いてる感じ。ココから逃げ出すんだ!( break away って歌ってたと思う)って高校卒業間近のアナが海外行きを計画していた、その矢先のゾンビ騒ぎな訳で。飛び立とうとする自分を押しとどめるもの、邪魔するものとしてのゾンビ。彼女のことを好きな親友の男子も、このゾンビ騒動でアナの出立が頓挫するだろうって喜んでたよね。
教条主義の校長もまた、ゾンビを歓迎する。自主的な人間なんて要らない、ただただ学校運営がマニュアル通りに出来ていれば良いのだと。
アナの友人たちの価値観はそれぞれで、恋愛至上主義のカップルもいれば、社会正義を訴えるFtM(Female to Male)の子もいる。トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)を体現する男の子が案外イイ奴だったっていうヒネリは、多様性の本質を言い当ててる気がする。

誰が死んじゃうのか、どういう死に方をするのかってところにも、かなり意味付けがなされていて味わい深い。いい脚本。
楽曲もそれぞれポップで楽しいし、歌詞がいいよね。現実の世界はハリウッド映画みたいには行かないんだーとか、ネットの雑音じゃなくて人間の声が聞きたいーとか。もう青春なんて遠い日の花火(うひゃー恥ずかしい)ってな自分にもグサグサ刺さりました。

そしてアナ役のエラ・ハントがとってもキュート!芯の強さが目力に現われてて。トランスジェンダーのステフ役、サラ・スワイヤーも華があったなぁ。

いやー、好きだわー、これ。青春モノが好きな人には自信を持ってオススメします!
ぽん

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