れん

生きてるだけで、愛。のれんのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
-
ウイスキーを氷の入ったグラスに注いで水を足す。
ゆらゆらと昇ってくる琥珀色。マドラーでふわっとかき混ぜれば水割りというお馴染みの一杯が。
それが多分世界と呼ばれるもの。
底にくるくる回りながら僅かに残る濃い原液がこの物語の登場人物たち。

どうにもならないことは多い。
支配が出来ない場合は時間を置くとか、距離を取るとか、諦める、とか。
だけど過眠症で躁鬱らしい寧子にとって、どうにもならない対象は自分なのだから、向き合おう、見つめ直そうとするたびに深淵を覗き込むことになってしまう。
その虚空。ぽっかりとあいた深い闇。
そんなヒロインを演じた趣里の凄さよ。
彼女もまた自分の深淵を覗いたに違いない。
津奈木役の菅田将暉。ほぼ無表情の表情に震える。なんて横顔なの……
わからなくていい。通り過ぎて行くものでいい。でもあなたの心に何かが触れた。
そんな作品を届ける関根光才、やはりとんでもない人だ。
れん

れん