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サクらんぼの恋のsiのネタバレレビュー・内容・結末

サクらんぼの恋(2018年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

裸の出ない人情ロマンポルノ。傑作!

45歳で童貞の不器用男が大ファンのAV女優と知り合って…、という話。

冒頭、則夫は一人の女優作品のみをコレクションし、何度も見ている作品でもインタビューシーンを飛ばさず見るほどにリナのことが好きである。このディテールこそが肝で、則夫は最初から性だけではない対象としてリナを見ている。

則夫のちょっとした優しさの積み重ねも素晴らしいし、ホームレスに弁当を与え続けるエピソードがクソみたいなファミレス店員の鼻をあかすシーンに繋がるのも良かった。彼女らしき女性店員に軽蔑されるあの感じ。則夫もリナと出会って強くなっている。

リナがファミレスでじっとしているシーンもラストの不在に活かされる。AV女優であることがばれて自宅に石を投げられて窓が割れたというトラウマが、吹きっさらしの窓の穴をそっと塞ぐという則夫のアクションによって浄化されていくという演出も素晴らしい。

おじさん二人で練習した上で、リナと一緒に自転車二人乗り初デートに繰り出し、横移動をたっぷり見せてくれるところもたまらない。

ラスト、則夫が10年ぶりにリナのAVを見る。ここでDVDの封を切る、まさに封印を解く所作が入るという演出も素晴らしいが、インタビュー中、ずっと斜め上の方を見つめて話すリナ。失われた時間を感じさせるほどに白髪の目立つ則夫が画面をしっかりと見つめる中、カット変わって画面越しにはっきりと視線を合わせて「ありがとう」と言う。時空を越えた視線の交錯!無茶苦茶グッと来る。そもそもAV撮影を覗かせた理由は、半ば別れを意識して、自分なんかでは付き合っても幸せにはなれないだろうから則夫に早く愛想をつかせてもらおうという意図であった筈である。ファンである則夫はいずれ見るかもしれない、その時に想いが伝わればいいという程度だった筈。しかしDVD化される前に則夫はデートに誘って来た。海での楽しさに忘れていた幸せを噛みしめたリナは、船の上で初めて本当に好きな人とセックスした訳である。しかも服を着たままで。あの時、裸を消費され続けた女性が愛だけを目的に抑えられない衝動で行為に及んでいたと後から気付く。AVインタビューの時にはこんな幸せが自分には訪れる訳がないと思っていた筈で、回想シーンなど頼らずエンドロールで観客自身が想いを馳せられる映画になっている。

それに加えて、桜井ユキが尋常ならざる可愛いさだったな…。

しかし、タイトルだけはどうにかならんかね?童貞をそこまでいじっていない映画だから良かった部分もあるのに、タイトルで無茶苦茶いじってるやん。
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