似太郎

嵐電の似太郎のレビュー・感想・評価

嵐電(2019年製作の映画)
4.8
相当、難解な物語構造を持った映画ではあるものの、全体的にふんわりとしたオブラートに包んであるので誰でも気軽に観れる作品。決して万人受けはしなくとも共感を呼べるタイプのラブストーリーだと思う。

主人公である他所者シナリオライターの井浦新が京都の映画撮影所に迷い込み、俳優の大西礼芳や鉄道マニアの高校生達と共に「時間」と「記憶」或いは「出会いと訣れ」を巡る旅が丹念な映像で描かれる。

俳優でもある鈴木卓爾監督の確かな演出力+シナリオ構築力でグイグイ引き込まれるファンタジックな世界観が魅力の一つ。役者陣はほぼど素人を起用しており、全体的に学芸会っぽさは否めずそこが惜しい。

だが、さすがにバカ丁寧な職人・鈴木卓爾だけあって緩急の効いたカット割やストーリーテリングの上手さは神懸かり的(誇張ではなく)と言ってよい。多数のキャラクターが入り乱れ、時間軸を省略した独自の映画話法はこの人ならではのセンス。映画的な仕掛け=ギミックの巧妙さには舌を巻く。

公開当時から賛否両論真っ二つに別れる作品だったと思うが、たまに何度か見返したくなる愛すべき映画讃歌であり人間讃歌。作品の雰囲気自体は比較的とっつき易いので複雑怪奇な内容もそこまで気にならない。かなり脚本が「入念に作り込まれた」或いは「頭を使う」タイプの作品ではある。

摩訶不思議な映画体験が味わえるので一度観てみては如何でしょう❓👀
似太郎

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