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パウロ 愛と赦しの物語のGaPToothのネタバレレビュー・内容・結末

パウロ 愛と赦しの物語(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『聖書』の「使徒たちの活動(筆者:医者ルカ)」から都合よく抜き出した記述と、「コリント人への第一の手紙(筆者:パウロ)」と「テモテへの第二の手紙(筆者:パウロ)」のパウロの言葉を都合よく引用して、パウロの生涯や信仰を描き出したと言い張っているフィクション。

『聖書』の記述と一致していない場面や演出が多い上に、1世紀当時の歴史家タキツスの文献とも全然違う内容になっちゃっている。
想像力の逞しい誰かによる良くできた作り話の数々に驚愕。

まあ「ステファノに対する血の罪」「イエスの弟子たちを迫害する者だった」「改宗(ダマスカスへ向かう途中のエピソード)&(目からウロコの元ネタ)」「テモテへの愛情」「イエスへの信仰」等はその通り。

肝心のルカやアクラとプリスキラ夫妻の立ち位置も果たした役割も『聖書』通りには描かれていない。

また見落としがちなのは、パウロは「使徒職」にあったけど「12使徒」では無いということ。
パウロは、イエスが人間として生きている時に会ってはいないからね。当然イエスに直接選ばれている訳はないから使徒とは言えない。
パウロは、ローマの市民権を持っていたから「諸国民に対する選びの器」として取り分けられたに過ぎないから。

残念だったのは、『聖書』でパウロ自身が「肉体のトゲ」と述べている事柄に関する描写と表現が全く違っていたこと。

さらに、信者の一人に「あなたが死ねば信仰も死んでしまう」と言わせていたけど、この時、使徒ヨハネ(12使徒の一人)がまだ生きてますからね。ヨハネの死は西暦98年以降ですから(笑)パウロが死んだところで信仰は死んだりしない。使徒ヨハネも聖書筆者の一人だからね。西暦98年までは福音書や手紙を書いてるしね。

大切な点として、パウロの宣教によって各地のクリスチャン会衆が組織されて強められたかのように描かれていたのも不敬極まりない(怒)
神が聖霊を送り出してパウロを力付け励まして大きな業を成し遂げられるようにした、というのが『聖書』の言わんとするところなのに。

物語としては面白かった。

劇中でパウロがルカに語っていた「愛の定義」はコリント人への第一の手紙13章4~8節にある。良い言葉なので以下に引用。
「愛は辛抱強く、また親切です。愛はねたまず、自慢せず、思い上がらず、みだりな振る舞いをせず、自分の利を求めず、刺激されても苛立ちません。傷つけられてもそれを根に持たず、不義を喜ばないで、真実なことと共に歓びます。すべてのことに耐え、すべてのことを信じ、すべてのことを希望し、すべてのことを忍耐します。愛は決して絶えません」

『聖書』に精通しておらず、歴史にも詳しくない人たちによって描かれたパウロ像。
神の存在を度外視し、パウロを崇め奉っている作品。
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