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人間の時間のodyssのレビュー・感想・評価

人間の時間(2018年製作の映画)
4.5
【天才キム・ギドクの不愉快な傑作】

キム・ギドクは「天才と○○は紙一重」の人である。
人間の極限を追求する映画人とも言える。

しかし、そのためにと言うべきか、彼はセクハラで韓国映画界から追放された。
そして外国で新型コロナにより死去した。

たしかに、いかに優れた映画監督だからといって、セクハラは許されない。
けれども、セクハラを犯した監督の作品だからと言って、最初から鑑賞拒否するのはいかがなものか。

犯罪と芸術は紙一重。
常識人が表現し得ないものを、犯罪者が表現し得る、というのも一面の真実。

という観点から見るなら、ギドク監督がやってくれた、と言いたくなるのがこの映画。
「傑作と○○は紙一重」の映画を作ってくれた。

人類というものが地上に現れてから定住に至るまでの長い歴史を2時間で描き出した。
農耕や牧畜の起源を寓意的に描き出した。
人間の本性がエゴと暴力とセックスにあることをも。

だからこそ、この映画を見ると不愉快になる。
人間とは、要するにエゴと暴力とセックスだけ、と分かってしまうからだ。
でも、人間って、そういうものなのだから、この映画も拒否してはならないのだ。拒否するなら、人間の本質から目をそらすことになるのだから。

藤井美菜が健闘している。
女優はこういうふうに容赦なく使わなきゃ駄目なんだよ。
女優を大事にする映画監督とは、分かっていない監督のことだ。
キム・ギドクが韓国人で藤井美菜が日本人だからじゃないかって?
わが是枝裕和監督だって、『空気人形』で韓国女優ペ・ドゥナをちゃんと脱がせたのだ。

女優はすべからくこういう風に使うべし!
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