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ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺のLibertaのレビュー・感想・評価

2.9
200年前に起きた、イギリスの天安門事件とも言うべき事件の話。織工の町マンチェスターで参政権や生活の改善を求めた市民の平和的な集会が当局によって暴力を伴う介入を受ける。
こういう事件があったということを分かりやすい形で記録することは大事だと思うし、映画の立派な役割の一つでもあると思うけど、この事件の現代的なインプリケーションについては人によって様々な意見があるのではないか。
単純に読めば「権力者はいつも身勝手だ」ということになるし、もう一歩考えを進めると、「だから抗議する側は慎重になった方がいいよ」ということになるかもしれない。また、Brexitという文脈を踏まえるのなら、「民衆と政府のコミュニケーションの失敗」という問題をそこに読み取ってもいいのかもしれない(もっとも、その問題への処方箋は映画の中で描かれてはいない)。
民衆の政治へのインプットは多くの場合混乱していて(映画の中でデモに向かう人々も、成人男性全員の参政権と、マンチェスターから下院議員を選出することと、穀物法の廃止の3つをさほど区別せずに語っている)、政策立案者に届く言葉になっていないことが多い。だから政府は民衆の意図を読み誤り、あるいは過小評価し、そのことが政府と民衆の溝をさらに深めることになる。
僕の見解としては、今、イギリス人が、民主主義に関する映画を作るのなら、その問題に取り組まなければ、あまり真正面から映画を作ったことにはならないのではないかと思う。まあ最近、「ダンケルク」、「Darkest hour」、「パディントン」と国威発揚のための映画ばかりだったので、反省を含んだこういう映画が作られたこと自体はいいことだと思う。
昔のイギリスはハリーポッターや進撃の巨人みたいな感じで、そこはエモかったです。そして、マンチェスターの人の訛りってあんな感じなんだなあと思った。
あと、何人かの人がレビューの中で触れている、「ジョセフというキャラの意味」については、僕もいまいちはっきりと分かりませんが、「イギリスのためにフランス軍と戦って帰ってきたのに、あろうことかそのイギリス軍に殺されるという皮肉」が込められているのではないかと思いました。
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