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ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺のskm818のレビュー・感想・評価

3.8
英国史上最悪の民衆虐殺事件ピータールーの虐殺。上映時間が長く途中少し眠くなったが、なかなかの見応え。19世紀初め頃の英国の貧しい庶民の暮らしとはこんな感じだったのかと思う。工場や何かで一家総出で働いてても賃金は減らされ、物価は上がり、戦場から戻ってきた息子は精神をやられて働き口もない。そんな彼らにとって集会は一種の娯楽でもあったんだと思う。しょっちゅうどこかに集まっては気炎を上げてる。演説が上手い人は人気者。もちろんこの貧しい暮らしをなんとかしたい、世の中おかしいっていう気持ちもあるのね。でも多分あの日マンチェスターのピーターズ広場に集まった人たちの大半は、集会自体をイベントとして楽しみたかった人たちなんじゃないかなあ。皆晴れ着きてお弁当持ってピクニック気分で子どもも連れて来てるんだよな。演説家の中には武力闘争を叫ぶ人もいたけど、大半は平和な行進と集会を楽しむ人たちだった。でもそれだけでも民衆が集まってるというだけで当局にとっては驚異で、それは排除されなければならなかった。責任者は土地の名士と競馬見物。当局側にも冷静な意見を出す者はいたが、従業員にサボタージュされた工場主たちの圧力に負けて、演説者たちへの逮捕状を出し、軍隊に出動命令。軍人も指揮官は冷静を呼びかけていたが、興奮した兵士たちがサーベルを振るい始め、一瞬にして平和な集会は地獄に変わっていく。冒頭で出てきたワーテルロー生き残りの青年は最後にピータールーで騎兵に面白半分に殺されてしまう。彼の葬儀で家族が泣いているところで映画は終わる。彼の人生はいったいなんだったのか。
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