すけ

ジェイクみたいな子のすけのレビュー・感想・評価

ジェイクみたいな子(2018年製作の映画)
3.7
ここ数ヶ月二言目には「疲れた」と言うようなダメ大人になっていたので一回休憩しようと思い鑑賞。全然休憩出来なかった。常にこちらを緊張させる危うい空気感とところどころ起こる登場人物の感情小爆発に心が付いて行けなかった。時々挟まるシュールなギャグがホッとする。

面白かったんだけど、文化差だろうか、各々何に悩んでいるのか、何に怒っていてどうして喧嘩をしているのか、ということがあまりハッキリしない。悩みってそんなもんかもしれないけど、お母さん一人をとってもわかりやすいものだけで「過去の事故」「妊娠への不安」「子供のジェンダー」「子供の態度」「受験」「母親との関係」「旦那との関係」ぐらい悩みがあるのにどれもシナリオ上でハッキリと言語化される事が無い。とにかく主題がどこにあるのかよくわからない喧嘩と言い合いをたくさんする。誰も中々ハッキリ主張せず言いすぎた??という顔で気まずそうに言葉を詰まらせるだけ。でもわかる。なんでそんなにわかりにくいのかわかる。数年前まではこの手の映画で取り上げられるのは「子供がマイノリティーでその事実を受け入れがたい家族が蟠りを解消していく」ぐらいのもんだったけど今や子供にはジェンダーを押し付けるものではないということが欧米では常識化してきているのでそんな所から話は始まらないしそんな事だけが争いの主軸にはならない。むしろジェンダーの問題を皮切りに他の不満や悩みが露呈していく構造なのだが、ジェンダーがネックになっている以上はっきりと意思表示ができない。マイノリティ事情に敏感な大人たちだから、余計に「あんな子」というレッテルを、しかも自分の息子に、能動的に貼っていくような自分を晒すような事は出来ない。といま考えればあのクライマックスまでのハッキリしない喧嘩がどれだけリアルなのかわかるけど、映画鑑賞中ははっきりしろやとのたうちまわった。

「自分の子供がもしトランスジェンダーだったらどうしよう」という所ではなく「もしトランスジェンダーならどう育てるのがよいか、そもそもトランスジェンダーなのか、どうすればラベルの押し付けにならないか、もしかしたら育て方によってはこんな苦労はさせなかったかもしれない」等の現代的な悩みであろうところに着目しつつ、その問題を解決するのに現代人にはどれだけの弊害があるのかをエンターテイメント性を保ったまま展開した映画だったのが凄くよかった。
息子がスカート履いてる事、女の子の遊びをする事に対する忌避みたいなものはそもそもあんまり取り上げられないし感じていない気がする。自分達は平気でも社会に出たらトランスジェンダーでは生き辛さを抱えるのではという事への恐怖心、何をしても性別を押し付けているような気がして何も言わない事を選択してきた事が間違いだったかもしれないという疑心、本当に現代人に生きる親の悩みという感じがする。


やはりクライマックスの喧嘩シーンがとてもよい。旦那さんが正論を吐き捨てる中奥さんがめちゃくちゃな事を言うのでしんどいけど、キャラクター造形から喧嘩までの一連の流れがめちゃくちゃ自然なので納得出来る。もっとちゃんと観てたらカタルシーーース!!!!って感じだったかもしれないけど頭がよくないのでどこを見れば良いのかわからなくなって慌てているうちにクライマックスに辿り着いてしまって勿体ない。

エンディングは結構無茶な終わり方した気がするのと、ジェイクに性格という性格が与えられていないのが残念だったなと思う。尺的に仕方ないかもしれないんだけど。
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