Kazu

オリバー・ストーン オン プーチンのKazuのレビュー・感想・評価

4.3
オリバー・ストーンによるロシアのプーチン大統領へのインタビューのドキュメンタリー。ウクライナ危機後からトランプ当選になる期間に複数回のインタビューを敢行し、関連の映像とともに編集されている。書籍も出ているが、プーチンの表情が語るものを得るには映像の方が良いのかもしれない。

アルカイダはもともとアメリカがソ連のアフガン侵攻の時に育成し統制が効かなくなった産物であること、ウクライナ危機の発端は大統領選への米CIAやヴィクトリア・ヌーランドなどによる公然とした介入であったこと、スノーデンのロシア滞在をプーチンは一度は断ったこと・アメリカと拘留者の交換の提案をして断られたこと、といったあまり知られていないが重要な主張がなされる。

国際情勢の実態をつかむのに、軍産複合体と近い英米のマスメディアの報道だけでは十分ではない。例えば、正直にいってロシアが中東で果たしている仲介役はアメリカよりずっと地域に安定をもたらしている。それらは、RT(Russian Times)など、非英米の情報源に触れるとことによって可能になる。

一方で、佐藤優氏がメルマガで指摘していたが、自国にとって有利なシナリオを作り上げるプーチンの卓越した能力により、米国はじめ国際社会とロシアとの協力にむけたプロパカンダ作品に仕上がっているとも捉えられる。従って、割り引いて聞くことも必要である。

この作品でプーチンの大学の専門は法学だったことを初めて知ったが、国際法に対する知識をはじめ理詰めでシナリオを作る能力の源泉になっているようだ。国内経済や軍事に関する数字がすぐ出てくることは全体にわたって官僚任せでない本当の管理をしていることがうかがえる。柔道ほか毎日の身体の鍛錬をかかさないのは、(アル中で退陣したエリツィンをそばで見ていたこともあるかもしれないが)頭のシャープさにも繋がっているのだろう。

プーチンにこれほど忌憚なく的確な質問を中立的に投げかけ、プーチンの生の声を西側に伝える役割を買って出たオリバー・ストーンは、ベトナム戦争を経験した本物の平和主義者であり、真実の探究者である。
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