久しぶりの時代劇。80分間飽きることなく鑑賞できた。
妻を持ち、剣道に長ける1人の男が主人公。そしてその妻。2人は戦国の激動の中でも、農村で比較的穏やかに暮らしていた。ある日ひょんな事件が起き、偶然通りかかった老剣士と主人公が接触するところから物語はスタート。
老人は人を切ることを躊躇わない。そして物事の根本的解決より先に、ただ悪人を切ることを優先する。対して主人公は人を斬った経験がない。物事を穏やかに収束させることを重んじる。
老人は主人公に、人を切るということ、その重みを植え付けようとする、いやむしろ切ることの重みを麻痺させることで剣士として成長を促す。
その老人と、村で起こるいくつかの事件によって、穏やかだった主人公が少しずつ狂っていく、という物語。
いわゆる”かっこいい”時代劇や漫画では、この老人によって剣士としての能力が覚醒し、ヒーローとなって村や国を救うことになるだろう。しかしこの映画の面白いところは、老人の剣士としてのスタイルを主人公が最後まで受け入れられないまま話が終わるところだと思う。主人公は斬る事の意味を最後まで見出せない。こういう戦争批判の方法なのかな。その葛藤模様とアクションによる緊張感が相まって、重厚な時代劇となっていた。
「宮本から君へ」のタックでありコアとなる展開も似ているため宮本から君へが好きな人には大変刺さるだろう、僕はかなり刺さった。
時代劇とは何か、未だ時代劇の鑑賞歴が浅いためまだわからないけれど、今のところ僕にとっては、何かテーマ性の強い意味の込められたアクションとカテゴライズされる。
近年のアクションは比較的躍動感やカメラワークなど演出に注力されているため、興奮を伴う娯楽として鑑賞することが多い。僕もアクションを見る時と、ストーリーものを観る時では、頭のスイッチが切り替わるようになっている。
対して時代劇ではなぜ戦わなければならないのか、なぜ殺さなければならなかったのか、その「理由」にフォーカスが置かれる。