北斗星

凪待ちの北斗星のネタバレレビュー・内容・結末

凪待ち(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます


自分でもどうしようもない。
ギャンブルについついのめり込んでいってしまう。
カッとして喧嘩っ早い。
もう、どうしようもないのだ。
坂を転がり落ちるように、堕ちていく。

彼はもともと、悪人ではない。
根っからの『悪』ではないのだ。
善にも悪ににも成りきれなくて、
彼自身自分を持て余している。

夏祭りにチンピラと喧嘩していたら、信じていたもう一度人生をやり直そうと言ってくれた『近所の好い人』が、実は妻の浮気相手で、妻を殺した張本人だった。

まあ、やっぱりね。
リリーフランキーがででくると、やっぱり悪人役なんだよなあ。
最初から怪しいと思ってた。皆、思うだろう。
足が悪かったり、やけに羽振りがよかったり(財布に万札がたくさんあった)。

ラスト近く、内縁の妻(西田尚美)の父親が、郁男がヤクザに捕まってると聞き、たった独りで乗り込んでいく。
彼を見ていると、自分の若い頃そっくりだったんだろう。酒ばかり飲み、喧嘩に明け暮れていた。それを救ったのが、津波で亡くなった奥さんの存在だった。

そして、ヤクザの組長が舎弟に『この人には借りがある』といい、郁男を解放してくれた。
多分、義父の前科持ちというのは、組長を若い頃庇って刑務所に入ったのかもしれない。
何故そんな男を助けるのか?問われると、『こいつはオレのせがれだから』と。
私はここで、泣いた!
娘のミナミも泣いてた。私も全く同じ心境になる。
ミナミの心の機微をよく捉えていたのは、実母ではなく、郁男だったと思う。

最後は、亡くなった妻との婚姻届を書いた。証人は父と孫娘。そして、弔いの意味で海に沈める。

郁男は競輪で当てたカネを、またギャンブルに注ぐことはなく、父の大事な船を買い戻す。

父はもう、彼を実の息子、そして孫娘を彼の実の娘として、また、郁男自身も彼らの家族として、彼にまた一から出直してやり直せと、言葉は少ないが励ます。

そして彼を助けた2人は血の繋がりのない他人だったのだ。
ここがまたこの作品のいいところだと思う。

郁男は、多分『今まで他人だと思っていた家族』のために、これから恩がある父の船に乗り、今度こそあの町で再出発するのだろう。

彼の人生が、穏やかな人生になることを望む。

私は香取慎吾のファンではない。
が、次作、そしてそのまた次作を観てみたいと思った。

ただ、香取はもう少し身体を絞った方がいいかもしれない。

彼の、俳優として成長していく姿を、郁男と重ねて見てみたい。
北斗星

北斗星