いち麦

ヴィーナスのいち麦のレビュー・感想・評価

ヴィーナス(2017年製作の映画)
5.0
TIL&GFF2018にて鑑賞。トランスジェンダーとして長い間、悩みつつも正直に女性として生きていこうとするシド。彼とはゲイ・カップルだったダニエルの動揺と心の変化、ラルフの家庭の問題、シドの母親が見せた拒絶の根源にあるもの等、彼の周りでも、考えさせられる人の心の内面が幾つも垣間見え、映画数本分の奥深さ。鑑賞後にじっくり反芻したくなる。そんなシリアスなテーマを抱えていながら、シドの見せるユーモアが実に軽やかで、時に笑いを撒きつつ物語を繋いでいく。『最高の人生のはじめ方』等、脇役の多かったデバーゴ・サンヤルが愉快な演技で堂々主役を果たす。少年ラルフ役 Jamie Mayers の愛嬌ある表情は印象的で、今後はコメディ俳優としての成長を期待。『トム・アット・ザ・ファーム』出演のピエール=イヴ・カルディナルがダニエルを演じる等、脇も手堅かった。インド映画かと見紛うほどの音楽使いも好み。正に、LGBT映画ならではの拾い物の逸品だった。
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