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スピルバーグ!のfujisanのレビュー・感想・評価

スピルバーグ!(2017年製作の映画)
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観たかった「フェイブルマンズ」がここにありました😋

こちらもU-NEXTお試し目的の一つ。動画配信のアイコンはありませんが、U-Nextで観ることが出来ます。

スピルバーグの天才っぷりが垣間見える濃密な146分のドキュメンタリー。いやー、面白かった😊

本作は2017年制作のドキュメンタリー
幼少期~現在までの作品(おそらく、ほぼ全て)を自ら語る形式で、途中、スコセッシやトム・クルーズなど、豪華なインタビューが挿入されます。最近でいうとタランティーノのドキュメンタリーがありましたが、本作は監督本人が語っているのと、技術的な解説も多く、とても濃い内容になっていました。

”自伝的”映画である「フェイブルマンズ」との違いとしては、特に母親のシーンの再現率の高さ。
自由奔放な性格、猿を連れ帰ってきた話、家の中で踊っているシーン、また、とても重要な、家族で行ったキャンプのシーンなど、映画そのままであり、母親自身が語る言葉も興味深かったです。

また、両親が晩年また仲良く暮らしているシーンや、映画ではあまり登場しなかった妹たちのインタビューも多く収録されており、妹から見た兄スピルバーグの話はとても面白かったです。

長くなりそうなので一旦ここで締めまして、以下はテーマ別にメモを残しておきます。



■ 監督人生

・少年期はいじめられっ子。「激突!」で追いかけられているのはいじめっ子から逃げる自分
・「アラビアのロレンス」を観て絶望。同時に、映画づくり以外に進むべき道はないと決意を固める
・ユニバーサルスタジオに住み着いて映画づくりを学んだと本人語る
・「ジョーズ」の成功が未来を切り開く
・マーティン・スコセッシ、ブライアン・デ・パルマ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラなどとの”映画小僧の集団”があった
・映画マニアのグループでいろんなアイデアで短い映像を作って見せあっていた(「スターウォーズ」の最初に物語が流れるのはデ・パルマのアイデアらしい)
・成功からの転落。「1941」の大失敗
・ルーカスに誘われて作った「インディ・ジョーンズ」に救われる。今でも好きなシリーズ
・カラー・パープルでシリアスで大人向けの作風にチャレンジ


■ ユダヤ人であることについて

・敬虔なユダヤ教の一家に生まれ育ったことでいじめられたので、ユダヤ人であることが嫌だった
・再婚相手であるケイト・キャプショーとの出会いで大きく変わった
(ケイト・キャプショーは結婚前にユダヤ教へ改宗)
・全身全霊を掛けて「シンドラーのリスト」に取り組んだ
>他の映画とはカメラワークが全く違う
>シンドラーは不思議な人物であり、善悪の判断は観客に委ねた
>撮影中は編集後のシーンを見ることが出来ないほど精神的に追い詰められた
・その後は、「ミュンヘン」、「ブリッジ・オブ・スパイ」、「リンカーン」などで、国や民主主義を描くことができるようになった


■ 映画技法

・妹たちを怖がらせることで演出、特殊効果が身についた😅
・映像で全てを説明する
>マーティン・スコセッシは時々無音でスピルバーグの映画を見る。セリフがなくても何がいいたいのかが伝わるように作られている

・映画作りにつきもののトラブルを臨機応変なアイデアで回避(アイデアの宝庫)
>ジョーズのサメロボットの出来が酷く、やむなくサメにくくりつけられた樽の映像をメインに。結果、サメ映画なのにサメを映さないことが逆に臨場感を盛り上げ、切り抜ける

・子役との付き合いは、子どもと同じ目線で、友達のように接する
>「E.T.」のドリュー・バリモアかわいい
・「ジュラシック・パーク」で採用したCGを初めて見たときの感動


■ 家族・父親像について

・仕事命で家族を振り回し、母親と離婚した父が嫌いだった
・両親が離婚した事が大きく映画の内容に影響している
・初期作については特に、家族とは、父親とは、を自作に投影
>「宇宙戦争」等、離婚がいかに子どもを傷つけるか、を描いた
>困難を乗り越えて成長し、自立する子どもを描いた「太陽の帝国」等

・離婚により傷ついたにも関わらず、一度目の結婚は上手くいかなかった
・マックス(マックス・スピルバーグ)には申し訳ない気持ち
・今はたくさんの子どもたちがいて幸せ(ケイト・キャプショーとの間に5人の子供をもうける)

・「プライベート・ライアン」は観客がそこにいるように撮った
・本作で戦争の悲惨さを経験したことで父を許す事ができた
・妹たちも父には反感を持っていたが、父は離婚の原因を母親のせいであると話をしていなかった(「フェイブルマンズ」と同じ)
・父親との関係に区切りをつけるために「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」を撮った



監督仲間や出演俳優たち、皆が映画作りの天才であると語るスピルバーグ。この映画で語られるエピソードや事実は確かに凄まじく、特に頭の中で完成後の映像が再生できる能力、同時に複数のことを処理できる処理能力の高さに驚愕しました。

このドキュメンタリーは、スーザン・レイシー監督によるものですが、「アラビアのロレンス」から始まり、「アラビアのロレンス」で終わる構成も見事で、とても充実した146分の映像旅行でした。

本作はU-Next独占配信で、配信は12月末までとアナウンスされています。本作を見るだけでも、体験登録する価値はあるかと思います!




2023年 Mark!した映画:294本
うち、4以上を付けたのは32本 → プロフィールに書きました
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