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Girl/ガールのmofaのレビュー・感想・評価

Girl/ガール(2018年製作の映画)
4.0
【トランスジェンダーとして迎える
思春期の困難さ】

とにかく、凄い映画。
初めから最後まで、非常に痛々しい作品で、
それは、トランスジェンダーとして迎える思春期の、
困難さと、視野狭窄感が、とてもリアルに感じる事が出来るのだ。

 自分の性に迷いがない人間であっても、
思春期というのは、時に、厄介である。

ウチの娘なんて、鼻に出来たニキビでさえ、
自分のマイナスすべての原因とばかりに、
鏡をみては睨んでいる。
 
 そんなの、誰も気にしないよ・・・
と声を掛けても、
すれ違う人間も、このニキビで自分のことを笑っている・・・と思わんばかりの、
自意識過剰・被害妄想ぶりなのだ。

 それが、トランスジェンダーでしかも、
自分の自覚する性に、
不要なものがあったら・・・・。
それ以上の違和感と、嫌悪感が、
向けられるに違いない。

その辺りを、ララ演じる
ビクトール・ポルスターが、
物凄い美貌と演技力で表現している。

トランスジェンダーも昔に比べたら、 
受け入れられるようになってきた。
この映画でも、父親は最大級の理解を示し、
ララを受け入れ、娘として愛している。
 それでも、ララの嫌悪感・違和感。
孤独感・焦燥感は、晴れることはない。

 理解のある医師たちが、
「君はもうすでに女性だよ」と
声を掛けても、そんな言葉は、
なんの意味も持たないのだと。
 
最後の決断は、確かに、彼女の体にとったら痛ましいものだったかも知れない。

けれど、死を選んだり、自暴自棄になって自分を粗末にする選択をしなかったことが、
理解ある父親が、ララのそばで、ララを認め、ララを愛してきたからじゃないかと思った。

トランスジェンダーの悲しみは、
差別だけではない。
確かに、下を見れば、ララよりもずっと不幸な運命を辿った人も、いる。
ララは、理解ある父親がいて、
恵まれているのかも知れない。
けれど、そういう比較するのは、無意味だ。
 人間として、自分を肯定し愛するのが当然ならば、
自分の一部でありながら、自分のものではない・・・という違和感は、
自己肯定感を奪う。
 
トランスジェンダーといえば、周囲の差別などに目がいきやすくなるが、
それだけではなく。
差別がないからと、理解されているからと、
身体的な違和感がゼロになるなんて事はないのだ。
 そういう意味では、トランスジェンダーの心情に一歩踏み込んだ、
より内面を描いた秀作であると思う。
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