Constantine

グリーンブックのConstantineのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
ロードムービーとしてはこの上なくよく出来た作品だと思う。ずる賢く口が立つトニーと生真面目で正義感の強いドク。相反する2人が行動を共にすることで良い化学反応を起こし、自然と笑いがこぼれる。

そして肝心の人種差別をテーマとして扱った映画としてはどうか。やはりそこに関してはどうにもぬるいように感じる。こんなもんではないだろうし、もっと酷い扱いを受けてきたと思う。社会派ドラマというよりもヒューマンドラマとして作っていることもあり、様々に脚色されてきたのだろうが、どうしても“アカデミー賞のための映画”という印象が拭いきれない。私個人としては同年上映の「ブラック・クランズマン」の方が遥かに社会に訴えかける要素は大きいと感じた。スパイク・リー監督が「グリーンブック」の作品賞受賞に怒りを表明したのは納得がいく。

しかし観ている内に違った考えも出てきた。それはドクの黒人としてのプライドを強調したいのではないかということである。耐え難い差別に対しても我慢強く無視し続けるドクの姿勢、何ならトニーのほうが手を挙げてしまうシーンもあり、それを「暴力は敗北だ」とたしなめるドク。それは白人から虐げたれ、観客から同情を受けるのではなく、それにも臆せず黒人としての誇りを持ち闘い続ける1人のヒーローを映し出していた。差別の酷さなどは脇に置き、ただ差別に立ち向かうドクの行動は観客に心を大きく動かしたと思う。ドク演じるマハーシャラ・アリが助演男優賞を獲ったのは必然であろう。

とは言っても、ドクはアーティストのしての才能があり、有名人であったからこそ差別にも立ち向かえたのかもしれない。やはり今作が作品賞を獲ったのはやりすぎだったのかもしれない。
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