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峠 最後のサムライのチーズマンのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
3.2
司馬遼太郎の原作小説の「峠」を映画化したものですが、あの小説の魅力を満足できる映像作品として昇華できたかどうかと言われると残念ながらそこまで届いてなかったと思います。

越後長岡藩の河井継之助を演じた役所広司の好演に頼り過ぎな作品に感じました。
小泉堯史監督の昔ながらの日本映画の語り口やテンポが悪い方に出ていて、単に古臭くて単調に感じます。
せっかく日本の時代劇らしい静的な美しいシーンがいくつもあるのにあまり緩急がなくもったいなかったですね。
あとたまにTVドラマの時代劇のようなカメラワークになるのがちょっと変なバランスでその度に違和感を感じました。


それでも題材となった原作小説のエッセンスである河井継之助という人物の面白さと、武士達がメタ目線に目覚めその上である種の役割りに殉ずるという武士の世の終わり頃特有の情緒や煌めきを感じ取れる映画ではありました。
あっちに寝返れば得、そんなの当の本人達が1番分かった上でという事なので、盲目的なバカということじゃないんですよね。

武士じゃなくなったとしても新政府の側についた方が利があると、全ての藩や武士が簡単にそちらになびいてたらまた違った文化になっていたかもしれません。
それはそれでまた違った面白さがあったかもしれないですが。

サムライは自分達をフィクションにさせなかったんですよね。
価値観ごとひっくり返されても徳川に最後の最後まで忠義だなんだと言って貫こうとした藩や武士達がいたという事実があればこそサムライという文化に力強さが生まれ今日も色々な国で様々なコンテンツとして享受されてるのかもしれないとおもいましたね。
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