キットカットガール

ある夏の始まりに/an early summerのキットカットガールのレビュー・感想・評価

3.7
光をたっぷり含んだ画が綺麗で、それでいてストーリーもミントのような爽やかさと微量の甘味があり、とても心地よかった。
日本のウェブCMのようなベタで濃いラブストーリーとは異なり、言葉にしにくい2人の関係性に儚さを感じた。中国の俳優さんということもあり私にとっては凄く新鮮で、尚且つナチュラルで素朴な演技も良かった。
加えて、中国人留学生という設定にもかなり心を掴まれた。敷かれたレールや親の職を世襲するのではなく、自分の道を切り開いていきたいという葛藤、若者世代に共通する進路の悩み。自分も留学した経験があった為、通ずるものがあった。
この淡い恋と異国の地での暮らしの中に花を添えた料理はうまい具合にバランスがとれていた。料理は心の距離を縮める道具であり、又心境が痛いほど反映されるもの。

続きが気になる素敵な短編作品だった。

【監督のコメントが素敵なので引用】

一人っ子政策のとられている中国では、私たちは親の世代が経験しえなかったチャンスをもって生まれてきます。しかしながら、それは同時に家族の期待と将来を一身に背負って生きることでもあります。
私たち中国の若者の多くは、より良い教育と生活を求めて海外へと旅立ちますが、滞在先では以前よりもより孤独な気持ちになっていることに気が付きます。
この作品『ある夏の始まり』では、そんな留学生たちの抱える感情的な葛藤と冒険を描きました。アイデンティの揺らぎを抱えながら生きる姿は、私自身の姿でもあります。