ひろ

ジョーカーのひろのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.4
トッド・フィリップス監督・脚本、スコット・シルヴァー脚本によって製作された2019年のアメリカ映画

第76回ヴェネツィア国際映画祭において金獅子賞を受賞

今年度期待値激高の作品の登場
DCコミックスの人気作品「バットマン」の中でも最高の人気ヴィランであるジョーカー。そのジョーカーを主人公にした作品。近年ヴィランを主人公にした作品が増えている。これには理由があるはず。ヒーローが世界を救う。そんな甘い夢を見れない世界なのか、ヴィランの持つ美学の方がよっぽど現実世界で役に立つかもしれない。美しき悪のカリスマ・ジョーカーが炸裂しています

ジョーカーは作品によって設定などキャラクター性も結構異なる。よってこの作品のジョーカーも新しい。バットマンのライバルにして最狂の敵ジョーカー。悪の誕生を描いたストーリーは未だかつてない美しき映画となった。コメディ映画で知られる監督だけにかなり意外だが、マーティン・スコセッシの「タクシードライバー」や「キング・オブ・コメディ」という傑作をオマージュした内容で、それはストーリーだけではなく映像からも見て取れる。スコセッシの美しい映画を彷彿させる作品だった。さらにスコセッシ作品を象徴するロバート・デ・ニーロが出演しているからたまらない

肝心のジョーカー役はホアキン・フェニックス。すでに演技派として確固たる地位を築いている役者だが、今回は別人に見えるほどの役作りをしている。これはデ・ニーロが元祖のデニーロ・アプローチとも呼ばれた鬼気迫る役作り。本家を前にしてここまで仕上げたホアキンは半端ない。孤独で心優しき男が悪のカリスマへと変貌していく過程は鳥肌もの。ホアキンの演技をひたすら見せつけられた2時間。これはホアキン初のオスカーも可能性大かも

それにしてもジョーカーというキャラクターは名優に好まれる。いや名優がジョーカーに呼び寄せられるのかもしれないが、ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレッド・レトと演技力抜群の俳優ばかり。どのジョーカーも素晴らしかった。もちろん今作のジョーカーも負けていない。美しき悪という点では、ヒース・レジャーのジョーカーと近いが、バットマンが主人公の作品と違ってジョーカーの掘り下げ方が深いので、よりインパクトがあったと思う

バットマンはダークヒーローとか言われているが、基本的には金持ちで傲慢さのある人物なのでそんなにヒーローっぽくない。アイアンマンと似たキャラクターでアンチも多い。対象的なジョーカーは貧乏で心優しいが報われない。おいおい。そんな理不尽なことあるか。金持ちがヒーローで貧乏が悪だと。格差社会においてこんな設定はゆるされ。多くの人はジョーカーに共感してしまう。ジョーカーの声は庶民の声なのだ。しかし弱き庶民の声は悪と呼ばれる。だからジョーカーは立ち上がる。だからジョーカーは美しい。バットマンよりジョーカーが好きだ。私服でもジョーカーTシャツ着てるし。がんばれジョーカー。負けるなジョーカー!
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