アズマロルヴァケル

コップ・ベイビーのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

コップ・ベイビー(2017年製作の映画)
3.5
意外と笑ってしまったロシア映画


・感想

リリース前からかなり気になっていたロシア映画だったので予備知識なしで見たのですが、言いたいことはちょっとありましたが、全体的にテンポが良く、意外性のある展開もあって、ロシア映画では珍しく王道のコメディ映画に仕上がっていたのではないかと思いました。

まず、何と言ってもこの作品の主役である主人公オレグの息子、バーニャ(クロモフ)はラストシーン以外は多分ですがVFXを使ってリアルに表現していて、少し違和感があるシーンが何個かありましたが、可愛い赤ちゃんなのにおっさんの声で喋るので物凄くシュール。モーションキャプチャーを使ったりしているのか、後半で車を運転したり動物園のカピバラの相手をしたりと動きがあまりにも生々しかった。

肝心の内容は率直に言うと、潜入捜査官と環境課のダメ警官のバディものにイルミネーションスタジオの『ボス・ベイビー』を足したような感じで、正直言って公開規模が小さくても良かったから公開してても良かったほど面白い。

出だしでオレグの妻のプロファイリングでクロモフがオレグの妻の経歴を勘で見破るシーンやオレグが不良少年を追いかけるシーンで主要人物がどういう人物かというのが分かりやすくて入り込みやすい。

で、物語がバーニャとクロモフの心が入れ替わったままの状態で、バーニャ(クロモフ)がオレグに向かって言葉を発したところで物語がはじまるために無駄なシーンがなく気軽に見れました。

ただ、個人的に気になったのは後半にオレグが動物園のカピバラと相手になった際にどうしてもカピバラもCGになっていたので、動物園のシーンだけが物凄く浮いていたような気はしました。最低限動物を使うにしても、実写の犬猫とCGのバーニャが揉めごとを起こすぐらいで良かったのですが、あの動物園のシーンはちょっと若干ピクサーの短編アニメみたいになっちゃってたのでもう少し実写とCGの融合を最後まで貫けなかったのだろうかと思ってなりませんでした。

あと、動物園でオレグの妻がオレグに会いに行ったときにどうしてオレグがストリップクラブで潜入捜査したことが露見されてるんだろうと疑問に思ったし、オレグが麻薬をうっかり飲んでハイになったときのシーンでどうやってオレグがバーニャを動物園で置き去りにしてしまったかを具体的には描かずにオレグが若者とバンジージャンプしているシーンが入ってて、バーニャを動物園で置き去りにしてしまった下りはオレグの妻があとから説明台詞で言うだけなので、シーン自体は時系列順に描いてしまっても良かったんじゃないかなぁと思いました。

クロモフの人格が乗り移ってるバーニャ自体は可愛さというよりも全体的にシュールさが際立った面白いキャラクターに仕上がっていたものの、ストーリーはコメディものとしてはバーニャ(クロモフ)がお漏らしに対して羞恥心を感じていたり、オレグの子守唄を歌ったらバーニャ(クロモフ)がグッスリ寝ちゃったりとほっこりさせられるところもあるし、ドラマとしては前半である程度伏線を張って、ラストに近づくにつれてだんだん伏線回収されていくところは分かりやすくて見事でした。

それとクロモフが追っていた犯罪組織のボスも一応意外性もあって結構面白かったです。ラストシーンでちゃんと実写のバーニャが出す笑顔があったのはある意味救いだし、実写のバーニャが「何てこった」とつぶやくところもクスッと笑えて最高でした。