福福吉吉

プライベート・ウォーの福福吉吉のレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
戦場記者のメリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)は常に戦場の最前線で取材を続けており、2001年のスリランカの内戦の際には攻撃を受けて、片目を失ってしまうが、頑なに戦場での取材を続ける。しかし、その裏では戦地で目撃した死体などが脳裏に焼き付いて、メリーは常に悪夢にうなされて精神的に異常をきたしていた。それでも彼女は戦場での報道にこだわり、最前線で犠牲にされる民衆の声を伝えようとする。

◆感想◆
実在した戦場記者の知られざる姿を描いており、メリー・コルヴィンが戦場の最前線に飛び込んでいく心情の動きとその裏側にある苦悩がしっかり伝わってきました。

メリー・コルヴィンという人物は戦場の中に自身が伝えるべきものがあると確信している一方、「取材しなければならない」という使命感に追われ続けているように感じました。戦場の最前線に立つのも伝えるべきことがそこにしかないと考えていて、「勇気」や「正義」という言葉が薄っぺらく見えるほど彼女の心の中の何かが強くて得体のしれないもののように感じました。

メリーは戦場から戻っているときは戦場の記憶に苛まれ、幻覚に苦しめられる状況が続きます。彼女の言葉として「あなたたちが直接見れないものを私は直接見ている」として、民衆が殺される姿を目撃することの精神的なつらさを吐露します。多くの人間が報道を通じて戦争というものを知るのですが、その戦争を知るためには彼女のような戦場記者が居てこそ成り立つのであって、彼女の仕事の重みがとても伝わってきました。

本作のストーリーは戦場での彼女の仕事ぶりと帰国してからの彼女の苦悩を交互に繰り返す構造になっており、ある意味似たような映像の繰り返しにも見えますが、その内容の濃さに心を揺れ動かされるものがあるので、全く退屈することなく最後まで観ることができました。

実在した人物としてその人生の凄まじさをロサムンド・パイクが見事に演じきっており、眼帯をして戦場に生きる彼女の凛々しさとその内面の苦しみが描かれた良作だと思います。戦場記者の方が伝えてくれなければ分からない戦場の事実の重みを強く感じる一作でした。

鑑賞日:2024年3月18日
鑑賞方法:BS松竹東急
(録画日:2023年6月15日)
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