柏エシディシ

群山:鵞鳥を咏うの柏エシディシのレビュー・感想・評価

群山:鵞鳥を咏う(2018年製作の映画)
3.0
福岡三部作の中で未見であった一本。
「福岡」「柳川」も決して判り易い作品ではなかったが、今回は輪にかけてハイコンテクストで、他の2作の様にのめり込むのが正直難しかった。
日本統治の負の歴史、中国と韓国の狭間で揺れるアイデンティティ、副題となっている詩人と鵞鳥の詩。
この辺りの知識と理解があればまた少し違ったのかもしれない。ちょっと悔しい。
そしてやはり劇場鑑賞で無かったことが大きく、旅先でまどろむ夢の様なチャン・リュルの映画世界にはやはり外界と遮断された映画館で臨むべきだった、と。
ただ自分の理解が追いつかないからと言って、決して退屈しないのがチャンリュル作品でもあって、力のある韓国の名優たちの淡いニュアンスの演技が贅沢に楽しめた。
特に、「別れる決心」の演技が記憶に新しいパク・ヘイルの、おんなじ男とは思いない朴訥として少し気の緩んだ情けない佇まいには驚いた。
前半と後半で時系列が反転する構成も、古い風情を残す旅先で時間の忘れるあの感覚を思い出させて、嗚呼、また何処かへ出掛けたい、なんて考えてしまう。
チャン・リュルは次は何処で映画を撮るのだろうか。
柏エシディシ

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