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足跡はかき消してのkuuのレビュー・感想・評価

足跡はかき消して(2018年製作の映画)
4.0
『足跡はかき消して』

ピーター・ロックの小説
『My Abandonment』の実写化。
恐らくPTSDに悩み、ある場所や社会に属することができない父ちゃんウィル(ベン・フォスター)は、確実に成長し興味を広げて世界と向き合っていく娘13歳のトム(トーマサイン・マッケンジー)と、この対照的な父娘が森の奥底で、非常識ともとれる環境下で唯一無二の共依存関係を構築していた。
この作品は、父娘に焦点を当てとって、世界からみた父娘じゃなく、父娘から見た世界のみを映し出してように思う。
父娘の絆が滅茶素晴らしぇ存在しとると感じたかなぁ。
映画『ハンナ』てのの、父ちゃんが死なないで、殺人レッスンの無い感じすね。
とにかく寡黙な父ちゃんと娘が見せる関係性が信じられっからこそ、この映画の流れは成り立つんやろな。
扨、ストーリーに戻りますが、
定期的に遙々山を下り街に買い物をしたり、森に隠れ暮らす怪しげな集団から薬(精神安定剤系かな?)の売買しながらも、できったけ、ある意味病的なまでも人目を避けて生活を送る父娘。
そんなある日、森の捜査に来よった保安官らにに見つかり捕まっちまう。
そして、二人は自治体の監視下におかれ、社会復帰に向けて訓練を強制的に行うことになる。
普通の想像の中じゃ父娘が引き裂かれていく場面ていゃあ、
ワンワンめぇめぇ喧しいくらい泣いたり、叫んだりと感情の爆発を演出しがちやけど、まぁ、実際それを観てる側は、それが作品としてのメリハリを生みよるし、感動を与えっから挿入すんのやろが、
せやけど、この『足跡はかき消して』に関しては、どないに仲が引き裂かれようとも、あくまでも黙って見つめあい、抱擁するくらいやった。
喜怒哀楽の表情も多少が見えるだけやけど、得も云われへん辺りを包む『哀愁』のベールてのを脱ごうとしなかったし、悲しさがリアリズムを生んだなぁ。
また、その淡々としたリアリズムが、森に息をさせ、呼吸すら感じ、神秘性をまとわせてた。
そう思えばおもうほど、
現代における救済てのの仕組みがめちゃ奇妙であり、機械的システムとして描かれてたかな。
確かに便利な世の中やし、沢山の救済すべき人をさばくにはシステムが必要やろけど、本当に人に寄り添っているのかて考えさせられた。
今コロナ禍で増え続けてる失業者や心身共に疲労した人を救済する側の人たちにも是非とも観て欲しいかなぁと。
kuu

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