こちとら毎日を生きることに必死

君は月夜に光り輝くのこちとら毎日を生きることに必死のレビュー・感想・評価

君は月夜に光り輝く(2019年製作の映画)
3.2
試写会あたって出かけたところ、若齢女性が想像以上に多く駆けつけており、ターゲット層が明確な映画だなぁ、と改めて感じたところで上映開始。


当然ながら、この手の映画は思春期以降、端から馬鹿にして、観ることが著しく少なくなっていったわけであるが、未だに若年層向け映画の主要ジャンルとして「難病モノ」は君臨し続けているのである。
研究が不足しているが、「純愛」と呼ばれる黎明期のキーワードから変遷し、現在では病気のマンネリに対応する中で、架空の病気が発明されSF化が進んでいる。
そんな中で本作はこのジャンルの映画として、大いに見所のある作品に仕上がっていると言える。

「難病モノ」のお約束はざっとこんなところではないだろうか。

・楽しい場面表現のピークから一気に病状が悪化する
・恋人は難病当事者の親と揉める
・難病当事者は恋人を遠ざけようとする
・難病当事者が亡くなった後、亡くなる前に残したメッセージが見つかる

通常これらのお約束のいずれか、あるいはいくつかを描きこんでいくことで映画を満たすことになるが、本作では、これらのお約束はきちっと守った上で、こうした定番展開にそれほど拘泥することなく、「より良い生」に焦点を向けていく姿勢が感じられる。
いわば泣きに来る既存顧客への目配せを忘れずに、メッセージ性も確保できているのである。

また、今作で特筆すべきは恋人側が自身の家族に抱えている問題を描いている点であろう。

姉が自殺(中原中也の他殺説も)、母親はその影響で精神疾患、
父親は理由は明かされないものの不在である。

難病当事者との人間関係を深める中で(ただし本作で恋愛関係の深化はほとんど描かれない)、自身の家族との関係にも変化をきたしていく。明らかに恋人側の成長、変化が見られるのである。
母親に向き合い、寄り添う彼の姿勢は思春期にしては出来過ぎの感もあるが。


ジャンル映画を観る上での最低限のマインドセットは観る側の責任としてわきまえておく必要はあるものの、私達のような非ターゲット層でも無理なく見れる作品となっており、消極的にはオススメです。

「特に観たいものがやっていないのであれば是非観るといいよ!」
こんな感じです。