フェミ研ゼミ

蜜蜂と遠雷のフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
5.0
俳優陣が小説の人みたいだった。(原作に忠実という意ではなく)
特に松岡茉優さんの演技が素晴らしくて、髪の揺れ(首や肩の揺れ)で鍵盤に指を走らせる力加減が分かった。実際には演奏していないのだろうけれど。指にどんな想いの音を込めている様が想像できた。かっこよくてかっこよくて俳優さんて素晴らしいな心臓と鎖骨のあいだがジーンと痺れた。


その他の俳優陣も演奏はしていないと分かっているのに、ピアノから溢れる音と戯れたり、ピアノと激しく闘ったり、共に涙を流して泣いたり、共に雨に打たれたり、風が頬を触る様な心地よさ、彼らはピアノを通して世界を見ているしその世界を音として我々観客にも覗かせてくれた。
彼らはピアノそのものでもあったし、ピアノに彼らが乗り移ったようでもあった。

世界は無限に音で溢れていると天才の彼らは笑顔で言う。
鍵盤には限りがあるにも関わらず、彼らの音色は同じ曲を奏でようとも無限の色を感じた。

同じ映画や音楽を違う心持ちで味わうと別物に感じるように、彼らの音楽もピアノ奏者のその曲に対する心象世界の変化と共に変わっていくんだなあと知らない世界が輝いて見えた。


天才たちを目の当たりにして生活者の音楽との違いを素人の私すら感じてしまった。

生活者の音楽というのは、見たことがあるの世界を美しく見せてくれる。
天才たちの音楽は別世界に連れて行ってくれるとでもいうのか、同じ楽譜なのに、その向こうへ連れて行ってくれる。

天才たちの音楽は楽しい。ライバルとして悔しさではなくワクワクが勝ってしまうほど、みんなピアノが好きで、そんな彼らがまた良かったな。

ピアノの天才とは皆努力の秀才なのだけど、
天才とは何に対して感じているんだろうかと考えている。
無垢の天才
感覚の天才
発見の天才
没頭の天才
楽しむ天才

今を生きる天才なんだろうか。
すごくすごく好きな映画と出会えて胸がいっぱい。
私もピアノが弾けたらいいのにと強く思った。
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