噛む力がまるでない

エスケープ・ルームの噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

エスケープ・ルーム(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 2019年製作のスリラーである。

 一応ソリッド・シチュエーション・ホラーなのだが、ゲーム性に思い切り振っており、ゲームをプレイしている感覚をそのまま映画に発生させたような作品だと思った。ゲーム性が強い作劇というのは今の映画の主流のひとつだが、それにしてもあまりにも安易なコンセプというか、図式的すぎる(〇〇すれば脱出アイテムが手に入る、という展開がずっと続く)。割り切って見れば面白いかもしれないが、映画として面白いとは思えない。
 そうなると、登場人物の関係性とか、裏で進行している計画とか、ゲーム以外のところでどうやって映画を面白くするかというところが問題になってくる。ところがそのへんもそんなに驚くような意外性のあるものではなかった。ただ、主人公のゾーイ(テイラー・ラッセル)が「ゲームのルールに従っていてはダメ」と1人だけ違った抵抗をしていくのは、これだけ図式的に映画を作るのはつまんない、とメタな視点で言っているみたいに見えてちょっと面白かった。

 ソニー・ピクチャーズの映画なので吹き替えは豪華で、花澤香菜や浪川大輔などの有名どころが出演していて充実している。ジェイソン(ジェイ・エリス)をあてる鈴木達央がかなり高圧的でイヤな感じのホワイトカラーを演じていて、ジェイソンが果たす役割を増幅させていると思う(ジェイソン自体は悪役としてもっと面白くしてもよかったんじゃないだろうか)。