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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのfujisanのレビュー・感想・評価

3.6
206分、約3時間半という長さでしたが、マーティン・スコセッシの手によって飽きさせない作品になっていました。

本作は、アメリカのジャーナリスト、デヴィッド・グランによるノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』を原作とした映画。

1920年前半、オクラホマ州で発生したネイティブ・アメリカンのオセージ族の連続殺人事件を調査したノンフィクションで、本作も事実を元にした映画ということになります。

かなり深いテーマの映画なのでパンフレットが欲しかったところですが、制作されていないとのことでした。
ということで、覚えているううちにアウトプットしておきます(乱文・長文失礼)


□ 映画の雰囲気
・闇に葬られていた事実を、俳優の演技と精緻に再現した世界観で魅せる映画で、同じ長尺の「アイリッシュマン」のように、淡々と語る映画だったと思います
・起承転結があるにはありますが、取り立てて派手なアクションシーンもないので、特に印象に残ったシーンというよりも、全体として良いもの観たなーという感想です。

□ オセージ族の悲哀に満ちた歴史
・19世紀にカンザス州からオクラホマ州に強制移住
・その土地から石油が発見され、共有権を獲得したオセージ族はアメリカ一裕福になるが、それがもとで乗っ取りや詐欺、殺人に苦しむ
・受益権を持つ純血のオセージ族は『純血資産』と呼ばれ、財産目当てで婚姻関係を結ぶ事案も多発(今回のディカプリオもこれ)
・働かなくなったオセージ族も、生活習慣や食生活の変化などで糖尿病や消耗性疾患、アルコール依存症などが増える
(このあたりは「ウインド・リバー」でも描かれていましたね)

□ FBIの描かれ方
・劇中で派遣されてくる捜査官が、エドガー・フーヴァーから派遣されたと発言しているので、フーヴァーが局長に就任した1924年頃かと
・フーヴァーが『科学捜査』によって成果を上げたことを考えると、連続怪死事件は当時の捜査がいかに適当だったかということ
(映画でも、ご遺体の頭をのこぎりで切断して弾丸を探すような、酷いシーンがありました)
・レオナルド・ディカプリオ自身、クリント・イーストウッド監督の「J・エドガー」で主演のフーヴァー役を演じていたことに因縁を感じます。監督との確執で映画の評価も散々だったので、FBI捜査官役は演じたくなかったのかも・・😅(ディカプリオは当初、FBI捜査官トム・ホワイト役だった)

□ 俳優
・本作のディカプリオの演技も素晴らしかったですが、眉間のシワが年々深くなっているような・・・😅 ちなみに、本作では女性たちから”蛇のような顔”って言われてました・・
・映画の冒頭で、戦争帰りであること、しきりに戦争中に病気になっていないかと聞かれていたことから、スペイン風邪が流行した第一次大戦に参加していたことが伺えます
・ロバート・デ・ニーロの怪演も見事でした。途中、床屋でひげそりしていたシーンなどはまるで「アンタッチャブル」で、久しぶりの”黒”デ・ニーロを堪能しました
・ディカプリオの妻で先住民の女性、モリーを演じたリリー・グラッドストーンは初見でしたが、素晴らしい女優さんでした。また、チョイ役でしたが、「ホエール」で復活したブレンダン・フレイザーのまんまるの可愛い眼を久しぶりに見れたのも良かったです

まとめると、
・歴史的意味からも、観てよかった作品
・名監督と名俳優によって高品質な映画となっていた
・とはいえ、3.5Hはさすがに長すぎる
という感じです。


以下は、ちょっとだけネタバレ編

























レオナルド・ディカプリオ演じるアーネストのクズっぷりは目に余るものがありましたが、それを自覚していて、ただ叔父の言いなりになっていたと考えると悲哀も感じます。

ただ、ラストで勇気を出して叔父を告発したまでは良かったですが、その後にまたヘタレ癖が出ていましたね。

妻のモリーから、『ショミカシ(コヨーテの意味)、あの注射の中身はなんだったの?』ってセリフは痺れましたし、『イ、インスリンだよ』しか答えられない上に、それを聞いて無言て妻が去ったあと、助けを求めるようにFBI捜査官のトム・ホワイトの顔を見るシーンに彼のすべてが表れているようでした。

映画のラスト、FBIの活躍を実演劇のように見せていたシーンは、FBIフーヴァー長官が実際に多用した民衆向けのプロパガンダ手法につながる演出になっていて、この時代の後、FBIによる盗聴の乱用など、また暗い時代が来るということを示唆していたと考えると、素晴らしい終わり方だったと思います。


手元メモから①:
・ショーン兄弟(ヘイルの手先として薬剤を処方)…不起訴
・ヘイル(デ・ニーロ) …終身刑となったが1947年釈放。オセージには戻れず、87歳、アリゾナの介護施設で死亡
・モリー … 夫アーネストとは離婚し、再婚して幸せに暮らす。数年の後、糖尿病で死亡
・アーネスト … 終身刑の後釈放。オセージの外れで弟バイロンとトレーラーハウスで暮らす

手元メモから②:
・石油が噴出するシーンは美しかったが、糞尿のようにも見えた
・エンドロールの途中で、ハエが飛ぶ音が入っていた
・逮捕されるあたりから、アーネストにハエがまとわりつくシーンが増える
・このあたりから、アーネストがやってることは石油(=金であり糞尿)にたかってるハエみたいなもん、という皮肉になってるのかも

手元メモから③:
・フクロウが死の死者として度々登場するところが印象的
・最後、マーティン・スコセッシ監督自身が出演してた
・『インディアンの命は犬の命より軽い』


取りとめない内容になりましたが、速報としてご容赦ください。




2023年 Mark!した映画:295本
うち、4以上を付けたのは本 → プロフィールに書きました
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