『惡の華』
映倫区分 PG12.
製作年 2019年。上映時間 127分。
累計発行部数300万部を記録し、テレビアニメ化もされた押見修造の同名コミックを、伊藤健太郎と玉城ティナの共演で実写映画化。
井口昇監督がメガホンをとり、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の岡田麿里が脚本を担当。

山に囲まれた地方都市。
中学2年生の春日高男は、ボードレールの詩集『惡の華』を心の拠り所に、息苦しい日常をやり過ごしていた。
ある日、憧れのクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を衝動的に盗んだところをクラスの問題児・仲村佐和に目撃されてしまった彼は、秘密にする代わりに仲村からある“契約”を持ちかけられる。
この日から仲村に支配されるようになった春日は、彼女の変態的な要求に翻弄されるうちに絶望を知り、自らのアイデンティティを崩壊させていく。
やがて『惡の華』への憧れにも似た魅力を仲村に感じ始めた頃、2人は夏祭りの夜に大事件を起こしてしまう。

今作品でボードレールの『悪の華』を始終注目して描いてる。
内容は置いといて、昔から愛読してたボードレール故に他人事でいれず嬉しくなった。
ガキのころ、たむろしてるコンビニの灯り、はたまた自販機の灯りのもとで、悪さを差段している皆を尻目に『悪の華』の一篇を読んではご満悦してた。
変態なガキやったけど、その詩の意味を理解してたかって云うと、ほど遠かった。
いや、正直、そのスタイルに酔ってただけやったと思う。
理解なんて出来ず。
フランス語は知らないし、ましてや堀口大学の翻訳(権威故の指摘もされないアナの多い訳)で深く理解できる筈はない。
今作品でも、将にそんな十代のチェリーボーイの自分に酔ったヘタレの話。
ちょい横道世之介して、ボードレール『悪の華』について書いてこうかと。
ボードレールの『悪の華』と云やぁ
新潮文庫しいては、堀口大學訳ちゅう事を当たり前のようになってる。
小生もご多分に漏れず、意気がって読んでた。
文庫本ジャケットにオドおどろしいムンクの絵も『悪の華』の退廃的なイメージを増幅させとるから、威厳と風格を今でも感じる。
せやけど、堀口大學訳の『悪の華』てのは、フランスの友達で日本語も堪能、しかもボードレールの大ファンから云わせれば糞翻訳やそうで(堀口の訳で良いものも沢山あるのは事実だとは思うが)、小生も翻訳家の鈴木信太郎や、安藤元雄の和訳で読み比べ、大翻訳家堀内大學様だけに誤訳も誰もツッこめなくて、そのまま出版されとんのかなぁと。
つまり、昭和初期以前の文学は、誤った和訳や、日本の古めかしい言葉を使うからこそ難解になるんちゃうかと。
ドストエフスキーやスタンダールとか純文学でも然り、せや、どんなん和訳がオススメなんかなぁと、色んなの読み比べて思うのは、当時の翻訳と新しく翻訳されたもんと比較して自分なりに理解するのがエエんかと、まぁ一番は著者の使う言語(原文)を習得するのがエエんやとは思う。
まぁそない書いても、ほならどんなとこが堀口の大學さんが誤訳しとんのかと云うと。
悪の華ね原文抜粋やけど
Nos péchés sont têtus,
nos repentirs sont lâches;
Nous nous faisons payer grassement nos aveux,
Et nous rentrons gaiement dans le chemin bourbeux,
Croyant par de vils pleurs laver toutes nos taches.

われらが罪は頑だ、われらが悔は見せかけだ。
思惑あっての告白だ、
だから早速いい気になって、泥濘道へ引返す、
空涙、心の汚はさっぱりと洗い流した気になって。(堀口訳)

原文引用「Nous nous faisons payer grassement nos aveux」の訳が「思惑あっての告白だ」って単純なわけない。
また、payerちゅう動詞は『なにかを支払う』ちゅう意味やけど、
他には『なにかの代償を払う』ちゅう意を含んどる。
その次にあるgrassementは『ぜいたくに』とか『気前よく、過分に』ちゅう意味で使われ、payer grassementで『気前よく支払う』ちゅう意味に落ち着く。
ホンでもって、faisonsはfaireの直説法現在形ちゅう動詞で、faire＋不定詞（動詞の原型のこと。この行ではpayer）で『〜したことにする』になる。
長げーけど、以上をふまえて訳すと、　
『（罪の代償を）告白（aveux）で十分以上に支払ったつもりになる』
ちゅう意味やし、当時のキリスト教徒の告解（懺悔）の習慣を風刺したもんやとわかる。
堀口訳やと、そうした風刺のニュアンスどころか、この箇所で告解のことが語られていることさえ伝わらへん、『君たちそんなこと当然知っとるやろ』って上から目線の権威主義的訳。
バンクシーの絵画に風刺を説明しなきゃなんの絵画か理解はしにくいのが多いと同じように。
なら、『思惑あっての告白だ』ちゅう表現てのは、どっから出てきたんやろか？
ここで風刺されとんのは
『懺悔しさえすれば罪は帳消しにできる』　
ちゅう糞に堕落したキリスト教徒の
『思惑』　
なんやから、
『思惑あっての告白』
で間違っちゃいはないが、問題は、
堀口訳が原文じゃ説明しとる『思惑』の内容をまったく伝えていなってとこ。
堀口は要的の『思惑』の中身を伝えなくてもいいと判断したんやろか。
そのせいで堀口訳は流れが意味不明なものになっているん。
どうして　
『早速いい気になって』
いるのかがこれではまったくわからない。。。
みたいなんが多い。
とは云え、その誤訳多めの『悪の華』に影響を受けて変態の域にこれたと思う。
せや、クソ詩しか産み出さない小生には一生ないやろけど、己の詩が、誤った訳にされて読まれたら悲しく遺憾に感じる筈。
そんなこんなで、ここに文字を書き残すのは気が引けるけど、退廃的な詩を読みふけり、己が作る詩には退廃は見えないようなり、今でも詩を楽しめるのは、堀口大學のお陰でもある。
今作品も、そんな誤った翻訳に酔ってる主人公とは云え、また、内容が糞でも、ボードレールの堀口大學訳の『悪の華』にインスパイアされた漫画家がこの作品を書いたとしても、罪は堀口大學にはない。
扠、今作品の描きたい旨と胸は何となく分かる。
『結局のところ、我々は皆、生活の中で、さらされてきた他の誰かの考えや意見を通して代償を払って生きている。
ただの普通の人。
自身の独創性のようなものはなく、空のコピーだ。
誰もが同じ愚かな生活を送ってるにすぎない。』
と思春期の普遍的な感覚と、徐々に荒波のなかで理解していく現実との間のどこかで、誰もがそのようなことに嫌悪感を覚える瞬間がある。
主人公はそんな蝶が変態する前のドロドロになってるサナギの中で、それが人一倍堪えれない感受性が豊かな持ち主なんやろし、人一倍痛烈に抗おうとしたけれど、結局のところ、自分自身も凡人であると気づいてしまった。
そして、絶望は彼にとって途轍もない脅威だったんやろな。
故に祭りの日の狂行に繋がったんやろ。
同じような月火水木金土日、そないな現実生活の中に喜びを見出すことは出来るんか。
平凡な日常を離れ、己の信じるものの中で自由に生きるんか。
作中で悩む若者たち。
彼彼女に老婆心ながら、
今は観察力を養うときと己に云い聞かせて精進してほしいかな。
観察力がある奴は、小さな変化に気づけるとともに、固定観念を持たずにいろいろな角度で物事をとらえられる。
変化に気がついた際、その変化に対し冷静かつ客観的な判断ができるため、素早くミスを発見できる。
そうあったなら狂行に繋がらんかったやろ。
でも、今作品は産まれんかったやろけど、世を儚んだ若者の狂行は多少はへる。
思春期を舞台にした今作品。
官能的な描写は『惡の華』から影響をうけたのか。
漫画の商業的な売れ線に必須エロテクなんかはわからない。
SM要素、
宗教要素、
ちょこっと洗脳匂わし等々。
もっとお話を広げれそうで、そうじゃないとこに日本産を感じる作品で悪くはなかった。
M男全開バリバリ春日高男を伊藤健太郎が、ミニチュア・マルキ・ド・サド少女の仲村佐和を玉城ティナが各々、役柄にあってたし、教祖的な魅力のある変態サディスト玉城ティナは結構その道には嵌まる人がいそう。
佐伯奈々子の純粋そうで、女の意地を張って行動するキャラも案外巧く演じれてたかな。
個人的には悪くない邦画でした。



まぁ拙い詩ですが、今作品の主人公たちと同じ十代に詠んだ詩を

　　　　　　　　　無題
　　　　　　　　 　kuu ことGeorge
男はこの世の生物の中で最も高尚であり
女はあらゆる理想のうちでは最も崇高なのかもしれない
創造主は男のために王座を、女のために祭壇を設けた
王座は男の士気をを高め、祭壇は女を神秘的にする
男は理性であり、女は感情である
理性は眩しさを造り、感情は愛を生ずる。
眩しさが生じ、愛が産まれる
男は理性ゆえに迷い、女は泪ゆえにムテキである
理想は俺達を納得させ、涙はわれわれを動かす
男はあらゆる英雄にもなれ
女はあらゆる宿命に打ち勝つことができる
英雄的行為は俺達を潔くし、受難はわれわれを崇高にする
男は支配しようとし、女は選ぶ権利を持っている
支配権は力を意味し、選択権は正義を意味する
男は堕天使であり、女は天使である
その堕天使は鎖に繋がれ、その天使には限界がない
男が熱望するのは理想的な栄光であり、女が熱望するのは美徳である
栄光はあらゆる偉大なものを造りだし
美徳はあらゆる神聖なものを造りだす
男は倫理であり、女は布教者である
倫理は正義を行い、布教者はムテキにする
男は思考し、女は夢想する
思考とは脳の中に蛆虫を持つことであり
夢想とは額にオーラを持つことである
男は海原であり、女は淡水湖である
大洋は珊瑚で飾られ、湖は歌ででまぶしく輝いている
男は飛べない鶏であり、女は歌うナイチンゲールである
空を飛べないということは支配誤ったからであり
歌うということは霊を征服するということである
男は寺院であり、女は拝殿である
俺達は寺院の前で自分自身を気付き、拝殿の前にひざまずく
死んで男は砂漠の地に朽ち果て、女は空の始まるところにおかれる
　

暴走する、破壊衝動に塗れた青春？映画。

こんな厨二病拗らせた中学生いたらしんどいなぁ😂
飯豊まりえも玉城ティナも伊藤健太郎も、お顔が良すぎる…🥺

2020年201本目

【この映画こそクソムシだ】4点
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監督:井口昇
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:127分
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2019年劇場鑑賞64本目。
普通に気持ち悪かった。個人的に『雪の華』といい今作といい、〜の華とつく映画が今年公開映画のワーストクラスに入り込んでくるのは笑えてしまう。こんなものを見ている自分が恥ずかしくなりました。時間を返せ馬鹿野郎笑

中学生の春日高男はクラスの佐伯に恋心を抱いていた。ある日の放課後、教室に戻ると佐伯の体操服が落ちていたのだが。。

原作未読。原作ファンの方がいると思うのですが、あえて未読の立場から豪語すると、これを映画として初見で見るとかなり気持ち悪く、意味不明でありました。カオスな青春を描きたいのでありましょうが、恐ろしいほどに主人公に共感できないためどうあがいても自分の中で評価が上がることはないでしょう。

ざっくりいうと、好きな子の体操服を持って帰ってしまって、それをカオス女に見られていて思いのまま振り回されるというもの。実は主人公もカオスでしたという具合でして、世間に理解されないようなバカみたいなことをやっているのが青春なのかもしれませんが今作は流石にやりすぎ。教室荒らすわパンツは盗むわ放火するわ親をバットで殴るわ、到底許されるものではありません。もしこれを見てカッコいいと思ってしまった中高生がいたら、悪いこと言わないのでやめといたほうが良いと思います。なによりも、今作においてこの春日という男は世間に対する罪悪感を1ミリも感じていない。優柔不断で何もできない見るに耐えない主人公なのですが、カオス女に執着しすぎて、ここまでくると素直に気持ち悪い。
こういうのはサイコパス映画とは言わない。ただただドン引きしかしない映画であります。

中学時代のキャスティングもミスっており、というかそんな大人じみた中学生いねえよ。この映画はテニプリかよ。途中まで中学校だったのかと気づかない有様。アナウンサーがあの二人を見てなぜ一言目で中学生といえるのか。意味がわからない。最早、玉城ティナを拝むためだけの映画でしかない。その玉城ティナでさえも、今回のこの仲村を演じるのには苦戦した模様。よく言えば怪演なのでしょうが、流石に意味不明なキャラすぎるのでどうしようもない。

また、これだけ無茶苦茶してるにも関わらず脱ぐシーンなどにはまるで本気を感じられない。別に見たいというわけではないのですが、脱いで顔と肩あたりしか見せないのは明らかに映像的に不自然。あんなものでやったと言われてもそりゃあ仲村もだから？てなりますよ。そういうところだけ遠慮しているから余計に気持ち悪い。やるならとことんやれよ。と余計なお世話をしたくなってきます。いや、でも設定は中学生だしそれは流石にまずいか。いや、映画としてはそこが微妙という意見に変わりはないか。。笑

この映画ではクソムシという、キーワードとも言えないような言葉が数十回連発されますが、本当にまさにこの映画こそクソムシでありました。余程の原作ファンでない限り見に行かないほうがよろしいです。例年であれば今作が年間ワースト作品なのでしょうが、今年はなんといっても『雪の華』がいます。明日も明後日も、その次も『雪の華』。こいつには流石に勝てません笑

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