まぬままおま

Munchausen(原題)のまぬままおまのレビュー・感想・評価

Munchausen(原題)(2013年製作の映画)
4.0
アリ・アスター短編作品。Youtubeで視聴できます(https://youtu.be/G9Rxu5uW41Q?si=DhoAZhqBjjVEe7Dj )。
セリフが一切ないから全くみるのに問題ないし、むしろセリフをなくして映像イメージと劇伴だけでこんなにも気持ち悪い作品をつくれるのがすごい。

以下、ネタバレを含みます。

大学入学を控える息子と旅立たれるのが悲しい母。

息子は大学に進学して、一生懸命勉強する。アメリカンフットボールに励んで、恋人もできる。その恋人と順当に結婚して、立派に独り立ちする。母とは人生がどんどん別れる。母に向ける笑顔が薄気味悪いぐらいしっかりしている息子だ。

しかし母は寂しい。ソファに息子はいないし、独りでテレビをみるだけだ。不安が襲う。上述の息子の「未来」は母が「恐怖に基づく発見術」で想像したものだ。だから母は別の未来を思い描く。すなわち息子を殺害し、大学進学をさせない未来を。

毒物を食べ物に混入する。息子がママありがとうみたいな感じでむしゃむしゃ食べる。ソファで吐き出す。体調が急変する。ベッドに横になるしかできない。痛みに悶える。けれど母はさらに毒入りスープを食べさせる。赤色のスープ。息子はカレンダーに大学進学までのカウトンダウンをしている。赤色の×。ママ心配しないで、と薄気味悪い笑みを浮かべる。そして笑顔のままあっけなく死ぬ。この笑顔には笑ってしまったのだが、カウントダウン0の果てにある未来は大学進学ではなく、死になってしまう。

息子の葬式。母が号泣しているのだが、殺したのはあなただと言いたくなる。けれど母としては正常な行動なのだろう。息子が大学進学して別れたくないから、殺すことは。ただ死によって「別れ」が実現しているのが皮肉ではあるが。

私も母に対して恩知らずな息子である。だから殺害されないように薄気味悪い笑顔は絶やさないでおこうと思う。