荒野の狼

地獄の荒野の狼のレビュー・感想・評価

地獄(1960年製作の映画)
5.0
天地茂・沼田曜一の二人の主役がいいですが、個人的には天地の恋人役の三ツ矢歌子が若々しく清楚で最高です。日傘を回して、再登場するシーンは美しくかつ不気味です。主役の天地茂に、同情してずっと見てしまいました。ゲーテのファウストのメフィストフェレスを思わせる友人役の沼田曜一が悪事へとそそのかさなければ、こんな不幸にはならないのにと。
結局、人間は一人一人の心の中に、メフィストフェレスのような存在があり、その故に悪事を行なうとすれば、厳しいことを言えば、同情の余地はないはずなのですが、同情を持って見てしまうのは、視聴者自身の弱さなのかもしれません。
沼田の役どころに対する解釈は分かれているようで、天地茂の影であるということには賛成ですが、英語版のDVD(Jigoku)のジャケットには沼田はドッペルゲンガーとまで書いてしまってありますが、その証拠はありません。一見救いのない、天国のない映画ですが、ラストシーンで三ツ矢歌子が果たす役割は、ファウストのラストで天国でファウストの愛した女性が演じた役割に極めて近いと思ったのは、私だけではないと思います。
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