小松屋たから

ナイト・オブ・シャドー 魔法拳の小松屋たからのレビュー・感想・評価

2.8
「〇〇拳」と邦題をつけた配給会社の苦労がしのばれる…

「聊斎志異」の原作者が実は妖怪ハンターで、跋扈する魑魅魍魎を封じていく、というスペクタクル作品。CGやVFXのクオリティの低さや西遊記を思わせる仲間キャラクター造形のチープさが、かえって妙な滋味を醸し出してはいるが、ストーリーは完全に破綻していて「毒にも薬にもならない」。

かつてジャッキー・チェン作品と聞けば胸を躍らせた身としては、斬新さも、アジアから世界を制すという気概も何も感じられないことが残念ではあった。昔の香港時代の映画はストーリーがめちゃくちゃでも面白かったが、その爆発力はまったく無かった。

ジャッキー・チェンが今、目指すところは何なのだろう、と真面目に考えさせられる。お金も名誉も十分あって、政治的なスタンスでは香港や台湾とは距離をおき、色々な面で「セーフティゾーン」にいる中でこの作品を選ぶ、ということは、何か凄い悟りの境地に達しているのか、あとは楽しく生きていきたいということなのか…

いずれにしろ、例えば、スタローンやシュワルツェネッガー、ハリソン・フォードが、「同窓会」と揶揄されつつも、老いた姿をさらけ出しながら映画という「見世物」へ肉体を捧げ続けていたりするのとはちょっと違う立場にいるような気がする。もちろん、愛嬌のあるコミカルな表情や椅子を使ったアクションなどは昔と変わらず楽しませてくれたけれど。

ただ、若い役者に見せ場を譲ったりと、「世代交代」を意識していることはなんとなく伝わってくる。また、女優陣の圧倒的な魅力は中国映画ならでは。良かった点といえば、そのあたりでしょうか。