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牧師といのちの崖のHKのレビュー・感想・評価

牧師といのちの崖(2018年製作の映画)
3.6
加瀬澤充監督によるドキュメンタリー映画。ポレポレ東中野にて視聴。

和歌山県の観光名所、三段壁。そこは風光明媚な観光名所だが、同時に人生に絶望した人たちが身を投げる自殺の名所として有名である。牧師の藤藪はいのちのでんわという看板を崖付近に立て、自殺志願者が電話で救いを求めるとすぐに駆け付ける。その後一時的に彼らを保護し、教会を解放してそこで共同生活をすることで彼らに生きる意味を教え、生きる方法を一緒に探る日々を送っていた。

自殺志願者と寄り添い、自らが運営する食堂で働かせることで、彼らに生きる意味を説こうとしている牧師を描いた重いドキュメンタリー。

自殺志願者も、借金が返せなかったり、リーマンショックで転職活動が上手く行かなかったり、自分の居場所を見出すことができないなど様々な事情を抱えていた。そんな自殺志願者一人一人と向き合って彼らを社会復帰させようとする藤藪牧師の真摯で懸命な姿勢には尊敬の意を表します。

しかし、それでも終盤における森君に対する言動には少しばかり引っかかる部分もあり、そこがちょっと不服に思いながらも、彼のまっすぐ志願者と向き合おうとする姿勢にとても共感いたしました。

映画はエンドロールの後に衝撃のラストですが…個人的には暗い映画が好きな自分にとっても、とてつもなく心に突き刺さるラストで涙がでそうになりました。

森君にはどこかシンクロしてしまうところがあり、一昔前の自分を投影してしまいます。何というか、自分もあれだけ追い詰められたことがあったのですが、家族の支えがあったおかげで何とか保てた部分もあるため、改めて家族の存在に感謝しました。

今現在、日本の自殺者数は全体的には減少傾向にありますが、30~40代の自殺者数は増加傾向にあります。彼ら一人一人に国民一人一人が寄り添って、ともに生きる意味を探すことが非常に大切です。

自分もしっかりとそのことを意識して、今の自分の生を感謝して生きていこうと思いました。この映画も最後は非常に後味悪いですが、それでもしっかりと過去の自分とも向き合い、前に進んでいきたいと思いました。

藤藪牧師にはこれからも絶望した人たちを一人でも多く救ってくれるよう心から祈っています。

今の時代にこそ、また観てもらいたい重いドキュメンタリー映画。最後は賛否別れるかもしれませんが、お勧めです。ぜひ劇場で見てください。
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