囚人13号

わが心にかくも愛しき/私の心よの囚人13号のレビュー・感想・評価

4.0
これぞディズニー映画。

実は『メリー・ポピンズ』以前からディズニーは実写×アニメーションを何度も実践しており、そもそも兄弟のデビュー作はヴァージニア・デイヴィスという少女をアニメーション世界と融合させた、フライシャー兄弟の初期作を彷彿とさせるものであった(詳細は「アリス・コメディ」と検索あれ)。


本作も融合とはいえ7~8割が実写で、アニメーションパートとは分離した形になっている。
少年と天邪鬼老女を繋ぐ羊の話だけで心温まる物語を造り上げているのはやはり流石だが、本作の本当の主役は黒い子羊なのだ。

見た目が皆とは違うということで苦悩するが、結局はそれが自分の個性であり長所なのだと気付き、アイデンティティを回復させるこの動物こそ完璧にディズニーの精神を体現したキャラクターで、それは「シリー・シンフォニー」シリーズの感動的な『空飛ぶネズミ』、どちらかと言えば子供向けの『子ぞうのエルマー』、最高傑作の一つ『みにくいアヒルの子』、そして『ダンボ』から確実に継承しているものである。

そのオリジナリティを品評会で絶賛してくれるのがハリー・ケリーというのも、何とも微笑ましいではないか…。



それはそうと、やはり真っ白な羊と比べられる少年の黒羊は人種差別反対の比喩(にしてはあまりにも直接的か)としか思えない。
ウォルト自身がそんな人物であったとは到底思えないが、やはり『南部の唄』に寄せられた批判の緩和策であったのだろうか。もし本作の本来の意図がそんな薄っぺらいものであったならば、至極残念である。
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