「こんなかにはまともな人間はおらん。
でもそん中でお前はクズや」
長野県のとある精神病院を舞台に、それぞれの過去を背負った患者達の物語。
母親と妻、妻の愛人を殺め、死刑囚となるが執行時に死にきれず、後遺症で車椅子生活になった秀丸(笑福亭鶴瓶)。
二度死刑を執行する事は出来ないと、この病院に送られた。
幻聴が聞こえ、パニック障害の元サラリーマンのチュウさん(綾野剛)
妹夫婦に疎まれ病院に追いやられている。
不登校を原因に入院する由紀(小松菜奈)
由紀は実の母親と母の再婚相手の継父と暮らしていたが、母の留守中に継父に日常的に性的DVを受け、母親は「女」の感情から由紀を憎み、家から追い出せる入院を選んだ。
厄介払い
家族や世間から遠ざけられた三人。
この施設で出会い、それぞれの優しさに触れ、穏やかに日々を送る。
そんなある日、院内で殺人事件が起こる。
犯人は秀丸。
殺されたのは嫌われ者の重宗(渋川清彦)
意志を持って重宗を殺めた秀丸。
彼を反抗に駆り立てた理由とは…?
由紀を妊娠させた継父。
体目当てに退院させ、それにヤキモチを焼き、また追い出す実母。
酷い、酷すぎる。
不憫な由紀を本当の娘のように大事にしていた秀丸。
秀丸が許せなかった重宗の卑劣で残忍な行動。
病院は、うじ虫を他の人から離す事はできなかったのだろうか?
優しい人の真心が踏みつけられたようだ。
浴場でチュウさんと秀丸が話し合うシーンから、秀丸が病院から出て行く所までは涙が止まらなかった。
退院し、人生をやり直そうとするチュウさん。
見習い看護師として働き、秀丸を支えて行く覚悟をした由紀。
そして車椅子から立ち上がった秀丸。
最後にそれぞれの希望が見え始める。
暗く、重い内容だが人を思いやる優しさに溢れた作品だと思う。
病院では頼りがいのあるチュウさんが、外では不安げな立ち振る舞いで、やはり病気なのだと伝わった。
でも母親と秀丸のために頑張っている。
どこまでもいい人だ。
法廷で大切な人を守ろうとする秀丸の真心、秀丸のために必死で頑張る由紀とチュウさんの姿に心を打たれた。
役者の演技が脇を固める人達も全て良かった
主要キャスト三人の繊細な表情には感情を揺さぶられる。