叡福寺清子

PITY ある不幸な男の叡福寺清子のネタバレレビュー・内容・結末

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

奥様が事故で昏睡状態に陥った男性.世間は男性に同情し,なんやかんやと親切にいたします.そんな日々が日常化した時,男性はそれが当たり前・・・どころか同情を求めるようになると同時に,自身の不幸な状況に依存するようになってしまいます.そう,男性の心持ちは,不幸依存症と称するにふさわしいものでした.ところがそんなある日,奥様が奇跡的に覚醒いたします.歓喜すべき事柄なれど,不幸依存症の男性には・・・

何度も言っておりますが,呼延灼の中の人はアルコール依存症でして,稀に無知な方が「なんでそんなになるまで飲むの?」とお聞きになります.んなもん,依存症だからに決まっておりますが,男性の行動も依存症という症状に馴染みがない方には,奇々怪々に映るやもしれません.ですが,依存症はすでに理性の埒外,常識の範疇外にございますから,男性の行動を理解しようとしても無駄であります.息子のピアノの調律を狂わせる,犬を大海に捨て去る,そして家族に手をかける.自身が不幸であるために.大変剣呑な状態でありますが,それも依存症のなせる技.問題なのは不幸依存症という病気を治療する病院・・・どころか治療法はあるのでしょうか.
私はアルコール依存症の治療法しか存じませんが,根幹は断酒の徹底であります.その為の教育であったり,抗酒剤であるわけですが,不幸を求める患者に「不幸を断ち切りなさい」と言われても不可能じゃないかしら.例えば信号が高頻度で赤になる事に不幸を感じるような患者に,依存の根源である不幸を断ち切りなさいと医師から言われても困るわけです.もちろん,不幸依存症という病気が実際あるのかどうかは存じませんが,ミュンヒハウゼン症候群があるくらいですから,もしかしたら奇病扱いで存在するやもしれません.まぁ本作の男性の場合は,逮捕されていっちょ上がりでしょうけどね.