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アグネスと幸せのパズルのGreenTのレビュー・感想・評価

アグネスと幸せのパズル(2018年製作の映画)
3.0
主人公のアグネス(ケリー・マクドナルド)が、バースデー・パーティの準備をしているところから始まります。部屋の飾り付けをし、ケーキを焼き、たくさんの人が到着してからは忙しくサービスをする。夫のルイが割ったお皿を片付ける・・・。

しかし蓋を開けてみると、それはアグネスの誕生日だった。後片付けも自分でし、やっと一息ついて台所でワインを飲むアグネス。

自分の誕生日を自分で用意させられる・・・夫と2人の息子は「お母さんの誕生会をやろうよ!」とヤル気だけは満々だけど、実際用意するのはお母さんなんだろうなあと思わされる。

バースデー・プレゼントの中にジグソーパズルがあり、家族がいない昼間にやってみると、意外にも自分が得意なことに気が付き、もっと違うパズルも欲しくなって、ニューヨークにある専門店に足を運ぶようになる。

専業主婦として20年あまりも文句一つ言わずに家族に尽くしてきたアグネスが、ジグソーパズルにハマる・・・。これって一体、どうやって展開させていくんだろ?果たして面白い話になるのだろうか?とこの辺では思ってました。

アグネスは専門店でジグソーパズルのパートナーを探しているロバートに出逢い、コンテストに向けて週2回一緒に練習するようになるのだが、家族には骨折したおばさんの面倒を見に行っていると嘘をつく。

ロバート(イルファン・カーン)はインドからの移民のようなのだが、発明で一発あててお金があるらしく、ニューヨークのすごいいいアパートに住んでいる。発明家を名乗っているが、お金があるので日長一日TVを観たり、パズルをやったりしているようなのだが、祖国インドを始めとするワールド・ニュースを良く観ているのが、家と教会くらいしか知らないアグネスには新鮮に感じる。

ロバートにパズルの才能を褒められ、世界は広いんだということに気が付き始めたアグネスは、夫のルイ(デヴィッド・デンマン)に「私と出会ってなかったらどんな人生を送っていたと思う?」とか「もっとニュースを見るべきかも」とか言うんだけど、ルイは「どうしたんだお前」みたいな反応しかしない。

ルイは悪い人じゃないというか、夫としてはいい人材だと思うのですが、アグネスにはシンプルすぎる人なのかも。例えば、湖のほとりに別荘を買って、「これでバケーションのときいつも行くところがある」とか言う人。つまり色んな所に行ってみたいという人ではない。

それとか、ルイは自分が経営する自動車修理ショップに、長男ジギー(ババ・ウェイラー)を働かせているんですけど、ジギーはこの仕事が好きではない。イヤイヤやっているのでルイと確執が絶えない。ハッピーに見えないジギーにアグネスが「じゃあなにをやりたいの?」って訊くと「ママが料理をしているのを見ているのが好きだった。料理なら自信がある」と言う。なのでアグネスがルイにそう言うとルイは「ジギーが俺に背を向けた」と、そういう風に受け取る。

これって、長男はお父さんのようになりたい!と思って欲しい、父の仕事を継いで欲しい、っていう、かなりトラディショナルな考えですよね。ルイって人は、「俺は家族のために頑張って働いて、必要なものを全て与えている」ってことにすごく満足感を感じているんだけど、アグネスやジギーは、与えられるものでなく、自分が本当に欲しいものが欲しい。

こういう態度は、家族から独立して行くことなので、ルイのような家族を大事にする人にとっては、自分の大事にしているものを壊されるような恐怖に感じる。

アグネスが家族を面倒見るだけの生活から、パズルをして1人の時間を楽しむようになっていくのに否定的な見方をする人も多いと思うのですが、私はとても共感しました。

ネタバレはコメント欄で!
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