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歎異抄をひらくのQTakaのレビュー・感想・評価

歎異抄をひらく(2019年製作の映画)
2.5
『歎異抄』を執筆したとされる唯円を主人公にして、浄土真宗の宗祖親鸞聖人を描いたアニメーションなのだが..
はたして、この難読書を解き明かしたのだろうか?
どうだろう?
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確かに、物語は、親鸞聖人、ご門弟、その中に唯円が描かれていた。
親鸞聖人の周囲にあるいくつかのエピソードも描かれていた。
物語は、関東から、京都へ舞台を移しながら描かれていた。
もしかすると、それだけで良かったのかもしれないと思う。
それで、親鸞聖人の生涯を描く、御伝承のような絵巻物をアニメーションで見せてくれた方が良かったのかもしれない。
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ただ、このアニメーションは、『歎異抄』にこだわった。
「善人なおもて往をとぐ、いわんや悪人をや」
『歎異抄』の、あるいは親鸞聖人の教えを端的に表わす一文だが、この理解は少し難しい。
特に、真宗の「他力本願」の教えに触れてこなかった人には、この『悪人正機』の話は、てんで受け付けないものかもしれない。
このアニメは、その難題に取り組んだのだから、その努力は認められてしかるべきなのかもしれない。
ただ、やはり、その難題、全く解決出来なかった気がする。
物語だけが進んでいき、大切なものが伝わらなかった気がする。
ちょっと難しすぎるし、大きすぎるテーマなんだと思う。
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映画としてみても、キャラクターの設定が限定されていたとしても、もう少し描くべきところが有った気がする。
まず、時代背景がほとんど描かれていない。
時は、下克上の世が到来した頃である。
世の中が、急速に乱れ、人々が路頭に迷う事態もあっただろう。
一方で、新しい風が吹いた時代でも有る。
関東の田舎と、京の都、その文化、生活の違いも描かれていなかった。
こうなると、映画として、魅力に欠けると思う。
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宗教を題材にするからといって、なにも教えを布教するために作られる必要は無いと思う。
何故なら、この場合宗祖が生きた時代をそこに見ると言う事は、この教えが世に生まれた必然性をそこに生きる人々と共に見て、感じる事だとも言えるからである。
何故、この教えだったのか。
その時代と共にいきる人々の姿から浮かび上がってくるものが有るだろう。
その中から、今日における私達にも繋がる何かを発見する事も有ろう。
その体験は、けっして無駄では無いと思う。
そんな映画作りが有っても良かったと思う。
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