映画初心者

フェアウェルの映画初心者のレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.7
大傑作。A24作品で断トツ好き。爆笑と号泣。他愛のない会話が気持ちよく、登場人物全員可愛らしい。「泣ける」映画を求めている人は肩透かしを食らうかもしれません。そして予告はあまり見ない方が良い。

余命がわずかの祖母。しかし、中国の風習で祖母自身にはそのことが伝えられていない。祖母にそのことを悟られないように結婚式を口実に一家一同が集まるが...

最高のおばあちゃん映画じゃないですか。役者陣がお見事。1人1人の顔が親しみやすいもので、親戚が集まった時の雰囲気や会話が自分の体験とほぼ同じ。中国の映画ですがアジア全体で共感を得やすい作品だと思います。

コメディ作品。爆笑と号泣でした。どうしてもお涙頂戴になりそうな話を演出で寸止めしている。狙った笑いではなく自然な会話から笑わせる。

冒頭から面白いですね。死の婉曲表現ギャグのセンスの良さ。家族より高齢で病気のはずの祖母の方が元気いっぱい。そのギャップでもう笑ってしまう。結婚式場で号泣する息子からどんどんカメラが引いてシュールな画面にしたり。謎のゲームで盛り上がり、どんどん不憫になっていく新郎など。

泣き要素もありますが最も美しいのは車を送る祖母ですね。親戚と別れる時に自分もあの視点で見ていたなぁと記憶が蘇りました。

東洋と西洋の考えの違いが浮き彫りになっていく構成も良いです。病気は気から。実際に事故にあった人に腕が無くなってると言うと気を失ってしまうという現象を聞きますがそれですね、良い嘘です。それを中国とアメリカの二項対立ではなく、日本人の新婦も挟むことで中和している感じがします。また、新婦に対して面倒と思っている祖母の排外的な人間性も出ているのが良い。中国文化も垣間見えるのも海外映画の良いところ。リアルな中国でした。

映像的で印象的なショットは結婚式のゲームと、家族が横並びで歩くショットでしょうか。どちらもA24作品のような芸術性が高めのものでした。上記した通り、カメラと被写体の距離でギャグもコントロールしていた。

閉じた映画ではなく、開けた映画、後ろ向きにならずに前向きに未来を見る映画にしたことで、よりお涙頂戴にならずにいい塩梅だと思いました。「泣き映画」なら最後に小さい頃の主人公と祖母のイメージ映像と感動的なBGMで終わらせていましたよね。

【総評】
大好きですこの映画。大傑作。他愛もない日常会話で面白く、死にどう向き合えば良いのか葛藤する家族、そして文化のギャップ。それを前向きに終わらせたのが良いです。

追記:祖母の息子がホテルで下着のまま寝転んでるのとても見たことある風景だった
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