Fitzcarraldo

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

3.1
The New Yorkerからインスパイアされた架空の雑誌"The French Dispatch"の最終号に掲載されるストーリーをオムニバス形式で描くWes Anderson脚本/監督作。

オープニングからお洒落の見本市のような美しいショットが延々と最後までクリエイトされる。ワンカットもハズレのない画づくりが信じられない。

そのお洒落なショットに速射砲かの如く次から次へとナレーションや台詞で情報をブッ放す。

早すぎて飲み込めない。
消化できない。

オープニングからすでについていけない。
お洒落なショットに見惚れていると、字幕がバンバンと変わってしまう。そもそも画の情報量も多いのに、そこに輪をかけて字幕が飛ぶように流れたら、どちらを見ていいか分からない。

どちからというと画の方を見てしまっていたので、なんの話なのか、いま何を描いているのか、全く理解できなかった。

お洒落な画に目が慣れてくると、物語に置いてかれた私は睡眠欲をいかにいなすかの格闘しかしていなかった。

これを1発で理解できる人いるのか?

これを理解できないのは私の搭載しているOSがそもそも対応してないのか? 


そのお洒落な表現方法、完全にウェス・アンダーソンというひとつのジャンルと呼んでいいと思うが、これはこれでオリジナリティがあり表現者としては素晴らしいと思うが、大量のナレーションでガシガシ押していくのには、どうも抵抗がある。

ナレーションに付随する画の羅列にすぎなくなってしまっている。次から次へとナレーションで説明していき、その説明描写を切り貼りしてるだけというか…

画の中で役者がやり取りした結果のビヘイビアー、細やかな機微の変化などから、その人物を類推していく。想像して感情移入させていくというような、こちらと画の中とのやり取りがあるわけではなく、ほぼすべて登場人物は画面に向かって話してくる。

会話のやり取りが、小津安二郎的といえば分かりやすいか⁈カメラのレンズに向かって人物が話しかけてくる。話しかけられたもう1人の人物はカメラが切り替わり、新たにまたレンズに話しかける。

この語り口がほとんどではなかったかと記憶しているが…

この語り口が小津作品ほど上手くいってない気がする。と言いながらも、物語からは完全に置いてけぼりにされたから、上手くいってないと思うだけなのかもしれないのだけどね。

何度か見て内容を把握したら、印象は変わるかもしれない。


画はお洒落なのは間違いないのだが、ものすごい書き割りというか…敢えてなんだろうけど。ちょっとドリフの全員集合というか、安いコントっぽいというか…

お洒落なドリフに見えなくもない。
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