ぼのご

幼い依頼人のぼのごのレビュー・感想・評価

幼い依頼人(2019年製作の映画)
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実話を基にした虐待についての話で、傍観者に対しての風刺もされていた。
虐待をする当事者の最悪さもさることながら、首を絞められた跡があるのを見て見ぬふりした担任や、ダビンの話に耳を貸さなかった警察、虐待が行われていることを知りながら放置した近所の住民らも救いようがないほど醜悪。

そんな中でジョンヨプは普通の人ながらまだ善良で突き放してもいなかったけど、出世の道を目の前にダビンたちと距離を置く。たぶん自分の人生が平和そのものだと、嘘のようにひたすら事態が悪化していく場合もあるってことを想像出来なくなるのかもしれない。
ダビンの弟が亡くなって絶望しかなかったけど、それでジョンヨプが心の底から後悔して、私利私欲を捨ててダビンの保護に全力を尽くす様子には救われた。またその手伝いをしてくれる人たちがいるのも幸いだった。自分もせめて、こういう場合に際して傍観者にはならないようにしたい。

ジョンヨプがダビンたちと知り合ってから、今までは気にしていなかった甥のわがままに苛立った気持ちはすごく良くわかる。温く温くと育つのは悪いことではないのかもしれないけど、つらい状況を強いられている人たちのことを考えると不平等具合に悲しくなる。まあでも、どうしようもないのかなぁ……。
ダビンに恋してると思われるクラスメイトもボンボンっぽくて、嫌な奴なんだろうなって思ってたらダビンの味方で最後までいい奴だった。見た目で判断してしまってごめんなさい。

実際の事件も調べたら殴る蹴るどころじゃない虐待な上に、下された刑期も映画より何年も短かった。父親も虐待に加わっていたみたいだけど、映画では継母が主犯で父親は直接関与していなくて、何故か最後の最後で良心が残っているような描写までされていて引っかかった。
あと登場人物の泣き顔のズームアップとか、観客をあからさまに泣かせようとしているような演出に思えて、制作者の意図を感じる場面がちょいちょいあったのが気になった。実話を基にした深刻な話なんだから、余計な意図は入れないでほしかったな。なんだかんだ号泣はしてしまったけど。
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